日本バスケ界にある格差。何のために新リーグをつくるのか? (3ページ目)

  • 木村元彦●取材・文 text by Kimura Yukihiko
  • 山本雷太●撮影 photo by Yamamoto Raita

bjリーグの参加チームは今シーズンひとつ増えて21となった photo by AFLObjリーグの参加チームは今シーズンひとつ増えて21となった photo by AFLO
――何のための新リーグかというところを根元から考えるうえで、世界で勝つための育成についてうかがいたいのですが。

「そうですね。世界で勝つためにはどういうチームがいいのだろうか、日本人に欠けている部分、日本人が優れてる部分はそれぞれ何なのか、という議論はもうずっとやってきました。オフェンスに関しては、外周りは日本人は何とかなるんですが、やっぱり中、インサイドでの得点になると厳しい。それは体格の向上とか色んな部分でやっていくしかないんですが。

 一方でこれは最終的にはまずディフェンスの問題に行き着きます。点を取れなければ、逆に点をやらなきゃいい、ということになります。するといかにディフェンシブで世界に戦うかがテーマになります。これは女子も同じなんですけどね。もう昔からそこは、『忍者ディフェンス』とかやっていましたから。

 育成の段階で自分たちにできることは何かとなると、『そもそもディフェンスとは何か』という考えのところまで、落とさないとダメなんです。そういうことを4年、8年っていうスパンではなくて、20年ぐらいの長いスパンで育成で培う必要があります。

 今スペインに、私の恩師が、日本人学校の校長先生で行っていて、その先生からいろんな情報をもらうんですけど、スペインの場合は育成が(トップから下部組織まで)串刺しになっていて、プロのヘッドコーチが、『今シーズンからこの2シーズンくらいは、我々バルセロナはこういうことをテーマにチームを作るぞ』って言うと、それをミニ(ミニバスケ)のカテゴリーまで、全部に同じように伝えるんですよ。

 要は下の世代もそれをやっていくと、プロになれるってみんなが思っている。そして努力する。その徹底した力というのが、国を挙げての育成力ですよね。クロアチアだとかも同じようなやり方でやっている。ブレないで、ひとつの競技団体が、考えて実行していく。まあ、模範的なことだと思うんですよね。

 日本の場合はエンデバーっていうシステム、『小学校で何センチ以上の子、中学校で何センチ以上の子は協会に預けてください。エリート教育をしますよ』と。そういうようなことを打ち出して、やっています。元々神奈川県が始めたものですが、ミニ、中学、高校、大学、実業団、プロってありますけども。本質的にさっき私が言ったような、ディフェンスの原理・原則であるとか、オフェンスの原理・原則を、ミニのカテゴリーから、教えていって、つなげていくことが大切だと思います。

 今の状態は、ミニはミニのカテゴリーの中でチームが勝ちたい。中学は中学の中で勝ちたい。というのがどうしても先に出ますよね。私も子どもがミニのチームにいて、親として応援すると、これは当たり前の自然な感情なんですよね。どうしても目の前の大会で勝ちたい」

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