【女子バスケ】WJBLプレイオフ開幕。女王JX攻略と五輪につながる戦い (2ページ目)

  • 小永吉陽子●文 text by Konagayoshi Yoko
  • 加藤よしお●写真 photo by Kato Yoshio

 それは、WJBL上位のコーチングスタッフが総結集した体制へと切り替わったからだ。これまで3年間、女子代表はアトランタ五輪で7位入賞に導いた中川文一氏が専任で指揮官を務めていたが、ヘッドコーチにはJXの内海知秀氏が、コーチにはトヨタのチョン・ヘイルとデンソーの小嶋裕二三の両氏が就任した。WJBLの上位チーム、しかも、バスケスタイルが異なる3人がスタッフに名を連ねたのは初めてのこと。五輪最終予選を6月に控えた直前での指揮官の交代は、中川氏らしいチーム作りができなかったという理由に加え、「WJBL勢の力を合わせて、何としてでもオリンピックのチケットを取りに行く」(高橋雅弘女子強化部長)という覚悟のもとに決定された。

 WJBLの力を総結集させて五輪予選に臨むのならば、このプレイオフがJXのひとり舞台になっていいはずがない。JXがいくら国内では連勝しているといっても、このまま楽に勝ってしまっては、国内仕様の戦い方しか身につかない。

「JXの一人勝ち」に対して、対戦チームはどう考えているのか。女子代表スタッフ就任会見で、トヨタのチョンHCとデンソーの小嶋HCはこう語った。

「これが日本の問題点。JXの連覇は素晴らしいものだけど、日本のバスケット界を考えたときには、うちも含めて周りがもっと頑張ってライバル関係を築かなきゃいけない。JXにしても、日本では1位だけど、アジアでは3番目で世界では15番目。そういう意識を選手もコーチも持って戦わないと日本は強くならない」(トヨタ・チョンHC)

「これまでのデンソーの目標は内向きだと実感した。たとえば、目標はリーグベスト4。全日本総合ではファイナルに出たことで終わってしまった。JX以外のチームも、アジアで1位になるんだ、日本が海外で勝つんだという意識を持ち、もう一段、二段、高いところに目標を設定して取り組んでいくことが必要」(デンソー小嶋HC)

 JXのエース大神も「JXがWJBLを引っ張っている自覚はある。うちのインサイドはすごく強いと思う。だったら接戦で勝つのではなく、圧倒して勝たなければならない。それに対して他のチームがその差を縮めていくことで、日本のレベルが上がっていく」と語っている。

 JXは渡嘉敷欠場の穴を、若手のインサイド陣がどう奮起して埋めるかにかかっている。トヨタの課題はメンタル。「力を出せない理由を分析中」とチョンHCが言うように、大舞台になると萎縮する弱さを克服しないかぎり頂上は見えてこない。デンソーはガードの小畑亜章子とインサイドの髙田真希を軸に、全日本総合選手権で初の決勝に進出した経験をつなげる勝負の時が来た。富士通は若手を育成しながらチームを改革中。今シーズンは2年目の篠原恵と山本千夏が力をつけてきた。この得点源の若手を、三谷藍、名木洋子らベテラン勢がどう牽引していくか。

 誰しも国内リーグでの"切磋琢磨"こそが、WJBLまたは日本が向上していく近道だと自覚している。オリンピック最終予選を6月に控えた今、JXのひとり舞台にさせない攻略と高い意識を発揮できるかどうかが、プレイオフ最大の見どころとなる。

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