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トヨタは若手ドライバーが育っているのか? F1へのステップアップの見通しは? 中嶋一貴に熱田護が直撃インタビュー

  • 熱田 護●取材・撮影 interview & photo by Mamoru Atsuta
  • 川原田 剛●構成・文 text by Tsuyoshi Kawarada

トヨタ・レーシング 中嶋一貴副会長 インタビュー後編(全2回)

 トヨタ・レーシング副会長としてWEC(世界耐久選手権)でチームディレクターを務めながら、若手ドライバーの育成も担当する中嶋一貴。彼が今、情熱を注いでいるのが世界のトップカテゴリーで活躍できる日本人ドライバーの育成だ。

 かつて自身も歩んだモータースポーツの本場ヨーロッパのフォーミュラカーレースに今、トヨタの若手たちが挑んでいるが、そのなかで直面している課題とは何か? そしてトヨタ育成ドライバーのF1昇格の可能性をどう見るのか? F1オーストリアGPが開催されたレッドブルリンクで、F1フォトグラファーの熱田護が中嶋一貴に話を聞いた。

F3のスターティンググリッドで育成ドライバーの中村仁選手と所属チームの様子を見守る中嶋一貴(左) photo by Mamoru AtsutaF3のスターティンググリッドで育成ドライバーの中村仁選手と所属チームの様子を見守る中嶋一貴(左) photo by Mamoru Atsutaこの記事に関連する写真を見る

【モータースポーツの裾野を広げる必要性】

熱田護(以下、熱田) 日本人ドライバーも平均的なレベルのF1ドライバーと比べてみると、それほど大きな実力差はないとのことです。でも、そのちょっとの差というのは、ドライバーの努力や経験を積み重ねることで克服できるものなのですか?

中嶋一貴(以下、中嶋) 最後は才能もあると思います。でも結局、才能がある人がそれだけの努力と経験を積むことでトップドライバーになっていますので、かなりの部分は克服できると思います。

 僕や小林可夢偉が育成プログラムのサポートを受けていた時代は当時の基準で言えば、すごくいい経験を積ませていただいたような気がしますが、今の目線でいうともっとできることあっただろうなと感じますね。

 今は周りの育成プログラムがどんどんレベルアップしていますので、トヨタとしてはまだまだ体制面で追いつかなければいけないことはあると思っています。

熱田 今のトヨタの育成は、WECに参戦しながらハースのリザーブドライバーを務める平川亮選手(32歳)を筆頭に、F2の宮田莉朋選手(26歳)、ヨーロッパのF3で戦っている中村仁選手(20歳)、フォーミュラ・リージョナル・フランス・チャンピオンシップの佐野雄城(19歳)がいます。

中嶋 そこに坪井翔選手(31歳)も含めていいかもしれません。彼は2025年、富士スピードウェイとイギリスのシルバーストン・サーキットでハースのTPC(旧車を使ったテスト)に乗っていますから。

熱田 ただ、ちょっと気になるのが、平川選手や坪井選手はすでに30歳を超えています。その下の世代は順調に育っているのでしょうか?

中嶋 若い世代の発掘はつねにしていますが、一番の課題は日本国内のカート競技人口が減少して、裾野がかなり狭くなっていることです。この問題を議論すると堂々巡りになってしまうのですが、やっぱり頂点が盛り上がってないと裾野も広がらないということだと思います。

 ホンダさんは近年ずっとF1で活動を続けてくださっていますが、トヨタは2009年シーズン限りで撤退したあとはずっとF1に関わっていませんでした。僕や可夢偉が育成ドライバーだった時代はやっぱりホンダさんとトヨタがF1に参戦し、そこに日本人ドライバーを乗せようという育成システムがあって、若い選手たちもそこを目指そうという空気がありました。

熱田 モータースポーツの入口となっているレーシングカートの競技人口はすごく減っていると聞きました。日本では1995年頃のピーク時に比べて、約半分になってしまっているようですね。

中嶋 そうですね。だから今、モータースポーツの裾野をもう一度広げていくチャンスをいただいていますので、すごくありがたいと思っています。トヨタの育成から世界の頂点に行ける道があると見せていくことで、少しでも裾野を広げていきたい。

 結局、100人のなかから育成ドライバーをひとり選ぶのか、1万人のなかから育成ドライバーをひとり選ぶのかって言ったら、全然違うじゃないですか。たとえばサッカーはすごくいい循環をしていると思います。ワールドカップで日本代表が活躍しましたが、やっぱりいろいろな要素が積み重なって、競技人口が野球を上回って、才能のある子がどんどんサッカーに集まり、レベルも上がっていったと思います。

 モータースポーツは道具を使いますので、純粋なフィジカルの能力だけでは勝負が決まらないところがありますが、サッカーのように頂点が盛り上がっていかないと、そこに入ってくる子どもたちが少なくなってしまう。そうすると、どうしても確率論として、いいドライバーが誕生する可能性が増えていかないと思います。

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著者プロフィール

  • 熱田護

    熱田護 (あつた・まもる)

    フォトグラファー。1963年、三重県鈴鹿市生まれ。2輪の世界GPを転戦したのち、1991年よりフリーカメラマンとしてF1の撮影を開始。取材500戦を超える日本を代表するF1カメラマンのひとり。

  • 川原田剛

    川原田剛 (かわらだ・つよし)

    1991年からF1専門誌で編集者として働き始め、その後フリーランスのライターとして独立。一般誌やスポーツ専門誌にモータースポーツの記事を執筆。現在は『週刊プレイボーイ』で連載「堂本光一 コンマ1秒の恍惚」を担当。スポーツ総合雑誌『webスポルティーバ』をはじめ、さまざまな媒体でスポーツやエンターテイメントの世界で活躍する人物のインタビュー記事を手がけている。

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