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F1現場で感じた「ホンダの看板」の重みに「これはヤバい」 ベテランメカニックふたりが語り合うF1の面白さ (3ページ目)

  • 熱田 護●インタビュー・撮影 interview&photo by Atsuta Mamoru
  • 川原田 剛●構成 text by Kawarada Tsuyoshi

【大洪水、ミサイル攻撃......旅先で起きたハプニング】

ーー少しレースから離れますが、F1は旅の連続です。今、ふたりの長い旅の歴史がようやく終わろうとしていますが、旅先で困ったこと、楽しかったことはありますか?

法原 僕は2023年のイタリア・イモラの大洪水ですね。あれは大変だった。最終的には第6戦エミリア・ロマーニャGPは中止になったのですが、アルファタウリのファクトリーがあるファエンツァ(エミリア・ロマーニャ州)の定宿にしているホテル周辺の被害が一番ひどくて、ホテルから一歩も外に出られなかったんです。

 ホテルの2階近くまで水に浸かってしまい、これはヤバいなと思いました。吉野さんやHRCのマネジメントサイドにも連絡して、「サーキットに行けません」と連絡した記憶があります。

吉野 あれはもうレースどころじゃないです。生きるか死ぬかの話ですから。「食事はどうしてる? 水はあるの?」などと法原さんと話しましたよね。その時、私は法原さんとは違うホテルに宿泊していたのですが、我々のほうは浸水がひどくないエリアだったので助かったんですけど。

法原 じつは僕たちは火曜にサーキットのガレージへ行って、メンテナンスのためにエンジンを箱から出して、もう台車の上にセットしていたんです。「よし、ここまでやったら、明日はすぐに作業を開始できるな」と思ってホテルに帰ったら、大洪水に見舞われてしまった。「エンジンが水の上にプカプカ浮いていたらどうしよう。シャレにならないぞ」と気が気じゃなかったです。でも幸いF1のパドックは大丈夫でした。

吉野 その横のF2やF3のパドックは水没したんですよね。あれは危なかったです。私は旅先で困ったことはそれほどないですが、インパクトがあったのは2021年、サウジアラビアGPが初開催された時ですね。

 私はレンタカーのドライバーをしたのですが、現地の人の運転があまりにも荒くて驚きました。ホテルからサーキットへ行くまでの距離が30 分くらいで、その間に3回くらい事故になりそうになって、同乗している人が悲鳴を上げていました(笑)。散々な思いをしながら、毎日サーキットに通っていました。

 翌年にはフリー走行の初日にジェッダ・コーニッシュ・サーキット近くの石油関連施設がミサイル攻撃されるという事件も起きました。サウジアラビアの異国感は、ちょっと特別でしたね。

最終回を読む>>>「レッドブルは人間味のある温かいチームだった」ホンダF1メカニックが抱く感謝「終わる感じがまったくしなかった」

<プロフィール>
吉野 誠 よしの・まこと/1969年生まれ。1990年、ホンダ入社。国内の一般車のサービス部門を経て、1999年からF1プロジェクトに参画。当初はホンダ・レーシング・ディベロップメント(HRD)が製作したテストカーのプロジェクトに関わり、2000〜2008年には第3期F1で活動。その後、燃料電池の開発に携わり、2018年にF1プロジェクトに復帰。2025年までレッドブル・レーシングのチーフメカニックを務めた。

法原 淳 のりはら・あつし/1970年生まれ。1991年、ホンダ入社。国内の一般車のサービス部門を経て、1998年からジョーダン・無限ホンダのエンジン開発に関わり、2000〜2008年、第3期F1プロジェクトに参画。その後、量産車のミッション開発に携わり、2018年からF1プロジェクトに復帰。2025年までレーシングブルズ(アルファタウリ、トロロッソ)のチーフメカニックを務めた。

著者プロフィール

  • 熱田護

    熱田護 (あつた・まもる)

    フォトグラファー。1963年、三重県鈴鹿市生まれ。2輪の世界GPを転戦したのち、1991年よりフリーカメラマンとしてF1の撮影を開始。取材500戦を超える日本を代表するF1カメラマンのひとり。

  • 川原田剛

    川原田剛 (かわらだ・つよし)

    1991年からF1専門誌で編集者として働き始め、その後フリーランスのライターとして独立。一般誌やスポーツ専門誌にモータースポーツの記事を執筆。現在は『週刊プレイボーイ』で連載「堂本光一 コンマ1秒の恍惚」を担当。スポーツ総合雑誌『webスポルティーバ』をはじめ、さまざまな媒体でスポーツやエンターテイメントの世界で活躍する人物のインタビュー記事を手がけている。

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