初王者ノリスは「今のF1が望むキャラクター」 天才フェルスタッペンとの激闘を中野信治が振り返る (3ページ目)
【ノリスは今のF1が望むキャラクター】
それでもノリスがチャンピオンを獲得できたのはマクラーレンのマシンの安定した速さにあります。もちろん、ノリスの成長も大きい。
僕はノリスと何度か話す機会がありましたが、すごく性格がいいんです。彼の印象をひとことで表すと、「本当のおぼっちゃま」。家は裕福で、子どもの頃にカートに夢中になり、それからずっとカートでいろんなレースをしてきたようです。
そこから順調にステップアップし、マクラーレンのジュニアドライバーになり、19歳でマクラーレンからF1デビューを果たします。その後も順調に結果を残し、F1ドライバーの生活を心の底から楽しんでいるよう見えました。
でもチャンピオンを獲得するためには、フェルスタッペンと対峙し、倒さなければならない。これまで楽しみながらレースをしてきたノリスは自分を変えることを余儀なくされます。そこからが彼にとって本当の闘いだったと思います。
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この2年間、ノリスは本当につらかったと思います。2024年、フェルスタッペンとのチャンピオン争いを通して一歩成長したと思ったら、2025年は若いチームメイトのオスカー・ピアストリが強力なライバルとして立ちはだかってきました。
とくにピアストリに中盤戦からリードを奪われて、後半戦に盛り返すまでに本当にいろいろな葛藤があったと思いますが、ノリスは大きなプレッシャーのなかでさらに成長し、タイトルをつかみ取りました。これがワールドチャンピオンになる人の成長速度なんだなと感心させられました。
ノリスがチャンピオンを獲ったことでF1ファンが増えるでしょう。彼が最終戦のアブダビGPで初めてタイトルを決めた瞬間を見ていて、すごく清々しい気持ちになりました。そんなふうに思わせるドライバーはなかなかいません。
いつも笑顔で、戦い方はクリーンで、ライバルをリスペクトし、家族を大事にする......。本当に今までなかったタイプのチャンピオンです。世界中で好かれる"愛されキャラ"ですよね。
おそらく今、F1が望んでいるのはノリスのようなキャラクターだと思います。2026年からF1はディズニーとのコラボが始まり、アメリカのエンターテイメントの要素を取り込んで、いっそう幅広い人たちが楽しめるスポーツとして新たな一歩を記します。
ノリスは新時代を迎えるF1のチャンピオンとしてふさわしい存在だと思います。でも、ノリスが引き立つのはフェルスタッペンがいるからなんですよね。それは2025年シーズンのチャンピオン争いを見て、強く感じました。
【プロフィール】
中野信治 なかの・しんじ/1971年、大阪府生まれ。F1、アメリカのカートおよびインディカー、ルマン24時間レースなどの国際舞台で長く活躍。現在は豊富な経験を生かし、ホンダ・レーシング・スクール鈴鹿(HRS鈴鹿)のエグゼクティブダイレクターとして、国内外で活躍する若手ドライバーの育成を行なう。また、DAZN(ダゾーン)のF1中継や毎週水曜のF1番組『WEDNESDAY F1 TIME』の解説を担当、2025年夏、世界中で大ヒットしたブラッド・ピット主演の映画『F1 / エフワン』の字幕監修も務めた。
著者プロフィール
川原田剛 (かわらだ・つよし)
1991年からF1専門誌で編集者として働き始め、その後フリーランスのライターとして独立。一般誌やスポーツ専門誌にモータースポーツの記事を執筆。現在は『週刊プレイボーイ』で連載「堂本光一 コンマ1秒の恍惚」を担当。スポーツ総合雑誌『webスポルティーバ』をはじめ、さまざまな媒体でスポーツやエンターテイメントの世界で活躍する人物のインタビュー記事を手がけている。
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