F1の「安くて音が大きい」エンジン回帰論に「開発競争がないレースが世界最高峰なのですか?」浅木泰昭が疑義 (2ページ目)
【環境の味方でなければF1に未来はない】
私もエンジン屋ですので、エンジンの鼓動は好きです。しかし、人々の騒音を含む環境問題に対する意識は年々高まっていますし、何より車体やエンジンの技術開発競争がF1の魅力のひとつだと私は思います。「昔のNAエンジンのほうが迫力のあるサウンドで、レースらしくてよかったよね」と言ってすべて済ませていいのか......というのが私の考えです。
100%カーボンニュートラル燃料(CNF)の使用を義務づけ、電動化比率が現行の約2割から5割へと大幅に引き上げられる2026年から導入されるレギュレーションの方向性は間違っていないと私は思います。その間に電気自動車(EV)がどれくらい世の中に受け入れられるのか。それによって今後のF1のレギュレーションの中身が変わってくると思います。
EVとCNFのどちらかが成功するのか、あるいはどちらも成功していない可能性もありますが、世の中が進んでいく方向性を先取りしながら、人々の環境意識との折り合いをどのようにつけるのか。そこが大事なポイントです。
いずれにせよ、「F1は環境の味方」だというイメージを打ち出さないと、今後は続いていかないと思います。さらに言えば、環境に貢献するというストーリーがないと自動車メーカーが自腹を切って参加するのは難しい。そのことをF1の主催者側にはもっと理解してほしいですね。
<プロフィール>
浅木泰昭 あさき・やすあき/1958年、広島県生まれ。1981年に本田技術研究所に入社し、第2期ホンダF1、初代オデッセイ、アコード、N-BOXなどの開発に携わる。2017年から第4期ホンダF1に復帰し、2021年までパワーユニット開発の陣頭指揮を執る。第4期活動の最終年となった2021年シーズン、ホンダは30年ぶりのタイトルを獲得。2023年春、ホンダを定年退職。現在は動画配信サービス「DAZN」でF1解説を務める。初の著書『危機を乗り越える力 ホンダF1を世界一に導いた技術者のどん底からの挑戦』(集英社インターナショナル)が好評発売中。
著者プロフィール
川原田剛 (かわらだ・つよし)
1991年からF1専門誌で編集者として働き始め、その後フリーランスのライターとして独立。一般誌やスポーツ専門誌にモータースポーツの記事を執筆。現在は『週刊プレイボーイ』で連載「堂本光一 コンマ1秒の恍惚」を担当。スポーツ総合雑誌『webスポルティーバ』をはじめ、さまざまな媒体でスポーツやエンターテイメントの世界で活躍する人物のインタビュー記事を手がけている。
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