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自動車メーカーのF1続々参戦の裏側に「喉から手が出るほどほしいストーリーがある」元ホンダ・浅木泰昭が指摘 (2ページ目)

  • 川原田 剛●取材・文 text by Kawarada Tsuyoshi

【F1は今も「走る実験室」だが......】

 ホンダの創業者・本田宗一郎さんはF1を「走る実験室」と呼びましたが、今でもF1は最先端技術を磨く場になっていると思います。2026年からはいろんな燃料メーカーがF1というフィールドで戦うためにCNFを開発・製造することになります。作ればノウハウが蓄積されていくのではないか、というのが私の期待です。

 今、CNFがなぜ普及しないかと言えば、コストが高く、大量生産の技術がまだないことです。でもF1がある程度のコスト高を許容し、そこで開発を続けていくと、もっと安く、大量のCNFを生産できるような技術がF1発でできるかもしれません。そうすると、F1が地球を救ったというストーリーが生まれる可能性があるわけです。

 それは電動化の推進に欠かせないバッテリーやモーターにしても同じことが言えます。F1で磨かれた技術が電気自動車やハイブリッド車などに搭載され、世の中の役に立つと言えるレギュレーションになっています。

 ただ最近、F1の運営側から、自然吸気のV8エンジンやV10エンジンに回帰しようという声が上がっています。地球のために別にならなくても、もっと音が大きくて、安いエンジンで、マシンも軽いほうが競争として面白いのではないのかという意見が出ています。

「地球のためになっている」というストーリーがないのであれば、自動車メーカーがF1に参戦し続けるのは難しくなります。自動車メーカーがいなくなるということは、技術開発競争が事実上なくなるということです。それは世界最高峰のF1にとって本当にいいことなのか......と、私は感じています。

第2回へつづく

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<プロフィール>
浅木泰昭 あさき・やすあき/1958年、広島県生まれ。1981年に本田技術研究所に入社し、第2期ホンダF1、初代オデッセイ、アコード、N-BOXなどの開発に携わる。2017年から第4期ホンダF1に復帰し、2021年までパワーユニット開発の陣頭指揮を執る。第4期活動の最終年となった2021年シーズン、ホンダは30年ぶりのタイトルを獲得。2023年春、ホンダを定年退職。現在は動画配信サービス「DAZN」でF1解説を務める。初の著書『危機を乗り越える力 ホンダF1を世界一に導いた技術者のどん底からの挑戦』(集英社インターナショナル)が好評発売中。

著者プロフィール

  • 川原田剛

    川原田剛 (かわらだ・つよし)

    1991年からF1専門誌で編集者として働き始め、その後フリーランスのライターとして独立。一般誌やスポーツ専門誌にモータースポーツの記事を執筆。現在は『週刊プレイボーイ』で連載「堂本光一 コンマ1秒の恍惚」を担当。スポーツ総合雑誌『webスポルティーバ』をはじめ、さまざまな媒体でスポーツやエンターテイメントの世界で活躍する人物のインタビュー記事を手がけている。

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