鈴鹿8耐が人々の心を強く揺り動かす理由 フィクションではとうてい発想できないことが現実になる (3ページ目)
【環境を考えたサステナブル燃料で参戦】
さらにEWCのフル参戦組では、開幕戦優勝・第2戦2位のYoshimura SERT Motulと、開幕戦2位・第2戦優勝のYART-YAMAHAは、ともに耐久レースの戦い方を知悉(ちしつ)しているチームだけに、鈴鹿でも上位争いに絡んでくることは必至だ。
そしてもうひとつ、注目したいチームがある。Team SUZUKI CN CHALLENGE(エティエンヌ・マッソン/濱原颯道/生形秀之)だ。
サステナブル燃料を使って走るスズキ photo by Honda Mobilityland Corporationこの記事に関連する写真を見る チーム名にもあるとおり、CN(カーボンニュートラル)を視野に据えたサステナブル燃料やタイヤ、ブレーキなどの部品を使用したプロジェクトで、「エクスペリメンタル(実験的)クラス」への参戦となる。チームを率いるのは、2022年まで長年スズキのMotoGPプロジェクトを牽引してきた佐原伸一。
佐原はつい数日前に投稿されたチームのSNSで、「パートナー企業の方たちから供給をいただいているサステナブルアイテムひとつひとつをよく検証して、データを取るところから始めています。新しい課題を見つけて克服するためにテストを繰り返すことで、また新しい目標が設定されます」「このプロジェクトは一回限りで終わるのではなく、継続的に進めようと考えており、新しい歴史の第一歩と思っています」 と、レースへ向けた抱負を述べている。
19日に公式走行が始まる今年の8耐では、ホンダとドゥカティが真っ向からぶつかり合うのか、それとも耐久のスペシャリストチームが熟練の戦略でしたたかな勝負強さを見せるのか。あるいは、そんな予想をあっさりとくつがえす、誰も想像できなかった波瀾万丈のドラマが待ちうけているかもしれない。
むしろ、それこそが8耐ならではのレース展開とも言えるだろう。そしてそれを一度でも経験してしまえば、もうそこから抜け出すことはできない。そんな魔力で人々を魅了しつづけるレースは、7月21日午前11時30分のル・マン式スタートで今年も戦いの火蓋を切る。
著者プロフィール

西村章 (にしむらあきら)
1964年、兵庫県生まれ。大阪大学卒業後、雑誌編集者を経て、1990年代から二輪ロードレースの取材を始め、2002年、MotoGPへ。主な著書に第17回小学館ノンフィクション大賞優秀賞、第22回ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞作『最後の王者MotoGPライダー・青山博一の軌跡』(小学館)、『再起せよ スズキMotoGPの一七五二日』(三栄)、『スポーツウォッシング なぜ〈勇気と感動〉は利用されるのか』 (集英社新書)などがある。
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