「こんなの馬鹿げている」。角田裕毅、5カ月ぶりの入賞でも苛立ち。なぜガスリーを先行させたのか (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

7秒のロスがなければ...

「チームオーダーでポジションを維持しろと言われて、そこは少しフラストレーションも溜まりましたけど、落ち着いてその後のレース運びができたのはよかったと思います。あれがなければどれだけポジションを上げられたかはわかりませんけど、もうちょっといい状況でレースを戦うことができたと思いますし、そこはチームとしっかり話し合っていきたいと思います」

 レース後の角田は憤りを抑えてそう語ったが、レース中は無線のやりとりから苛立ちが伝わってきた。フィニッシュ直後にも「こんなの馬鹿げている。信じられない。いつまでもこんなことはやっていられないよ」とチームに伝えている。

アルファタウリの戦略判断は正しかったのかアルファタウリの戦略判断は正しかったのかこの記事に関連する写真を見る 単純計算でも、この7秒のロスがなければ、5秒前でフィニッシュしたケビン・マグヌッセン(ハース)を抜くことができたはずで、ノリスやベッテルとの戦いももう少し可能性があったはずだ。いずれにしても、ガスリーを優先したアルファタウリの戦略判断は誰のためにもなっておらず、つまりチームの利益につながってはいない。

 同じようなシチュエーションの末に同士討ちとなった第10戦イギリスGPでの問題も、根本的な原因はチーム戦略にあった。あの時にその根本原因としっかり向き合わなかったツケが、こうして再びチームの利益を毀損したことになる。カナダ、鈴鹿に続いて、ここでも予選でブレーキのウォームアップに問題を抱えたように、同じミスを繰り返し成長できていないのは、失敗の本質的理由と向き合うことができていないからだろう。

 もちろん、チームとして角田よりもタイヤマネジメントに優れたガスリーを先行させておきたいと考えるのも理解できる。第2スティントはハードとミディアムでタイヤが異なりペースも違ったが、次のピットストップはほぼ同じタイミングで、第3スティントはふたりともハードタイヤ。戦略の違いはほとんどない。そういう状況下で、角田のレースを優先しようとチームに判断させるだけの信頼が、少なくともタイヤマネジメントやレースペース関してはガスリーほど築けていないということを表わしている。

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