スーパーGT初優勝の23歳コンビは昔、バチバチのライバル同士だった。今では悔し涙を流す相棒を励ましあう仲 (2ページ目)

  • 吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro
  • 吉田成信●撮影 photo by Yoshida Shigenobu

全日本F3のバトルは語り草

 その後、2019年にフェネストラズが全日本F3選手権に参戦し、宮田と壮絶なチャンピオン争いを演じる。ふたりは毎戦のように激しいトップ争いを展開し、フェネストラズが勝つと翌レースでは宮田がリベンジを果たすといった、一進一退のバトルを見せた。

 この年のチャンピオンを勝ち取ったのはフェネストラズだが、シーズンの優勝回数では宮田のほうが上回った。今でも関係者の間で語り継がれるほど、2019年の全日本F3は見どころ満載だった。

 2020年からはスーパーフォーミュラにステップアップし、現在もライバルとして切磋琢磨している宮田とフェネストラズ。それが奇しくも今年、スーパーGTでともに37号車のシートを託されることになり、チームメイトとして勝利を目指すことになった。

 とはいえ、ドライバー個人としては、同僚がライバルであることに変わりはない。チームメイトより劣っていると思われたくないがために、情報を共有する部分で手の内を隠す、ということも、よくある話だ。だが、このふたりの間には、そんな摩擦はないと言う。

 宮田に以前、フェネストラズとのコンビについて話を聞いた時、彼はこう答えた。

「ライバルだからひと言も話さないとか、バチバチした関係だとか、そういうのはまったくない。ライバルだからこそ情報共有がすごく多いし、お互いにどういうふうにしているかを話し合いながらやっているので、悪いことはないし、むしろやりやすいです」

 ふたりのSNSを見ても、シーズン前などの空いた時間に食事に行ったり、必勝祈願で神社に参拝する姿が投稿されており、意気投合している雰囲気がこちらにも伝わってきた。

 ただ、シーズン序盤はレースの流れを掴めず、期待が空回りしてしまう場面も見られた。

 特にフェネストラズはコロナ禍に伴う規制によって入国が大幅に遅れてしまい、スーパーGTはもちろんのこと、ほとんどのレーシングカーに乗れない日々が続いた。そのブランクが影響して開幕戦・岡山は予選Q1で敗退し、決勝も後手を踏む展開で11位に終わった。レース後、ひどく落ち込んだフェネストラズをフォローしようする宮田の姿が印象的だった。

 続く第2戦・富士では、序盤から上位争いを展開するものの、レース途中に導入されたセーフティカーからの再スタートの時、宮田が勢い余って1コーナーで他車をコース外に押し出してしまった。このペナルティによって終盤トップ浮上のチャンスが到来したにもかかわらず結果は14位。レース後、悔し涙を流す宮田に寄り添い、励ましの言葉をかけるフェネストラズの姿があった。

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