フェルスタッペンの大逆転優勝、その背景に何があったのか。ハミルトンも驚いた「フェラーリはハードを履いたの?」 (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

データが間違ってなければ...

 レース後、フェラーリがハードタイヤを履かせたのを知ったルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)は「え、彼らはハードを履いたの?」と驚き、そのペース差を身をもって体感したフェルスタッペンとラッセルは「そうだよ」と苦笑いしていた。

 当然、フェラーリもそのことはわかっていた。だが、自分たちのマシンならハードタイヤでもある程度のペースで走ることができる計算だったとビノット代表は言う。

「他車のハードタイヤのペースがよくないのはわかっていたが、今日の最大の問題は戦略ではなく、マシンのペースが想定よりも遅かったことだ。これは今シーズン初めてのことで、チャールズ(ルクレール)だけでなくカルロス(サインツ)も同様だった。

メルセデスAMGにも抜かれるフェラーリメルセデスAMGにも抜かれるフェラーリこの記事に関連する写真を見る カルロスはハミルトンとまったく同じ戦略だったが、彼の前からスタートしたにもかかわらず、10秒後方でフィニッシュすることになってしまった。つまり、マシンが想定どおりのパフォーマンスを発揮しておらず、そのせいでタイヤを想定どおりに機能させることができなかった。特にハードタイヤの場合はそうだった」

 各タイヤがどんなペースで何周走ることができるかを計算するのは、タイヤエンジニアの仕事だ。

 ストラテジストはそれをもとに、レース状況をリアルタイムで勘案したうえで戦略を決定する。つまり、タイヤエンジニアから提示されたデータが間違っていれば、ストラテジストの戦略判断も正しくは下せない。ハンガリーGPで起きたのは、そういうことだった。

 たしかにカルロス・サインツはまったく同じ戦略のハミルトンに逆転され、ついていくことができなかった。最後にハードをあきらめてソフトに履き替えたルクレールも、ハミルトンよりペースは遅かった。これまでの12戦に比べてレースペースが遅く、タイヤエンジニアの計算が間違った原因がマシンセットアップにある可能性も十分にある。

 ルクレールはミディアムタイヤで好ペースを維持しており、フェルスタッペンに左右されずそのまま走り続け、最後にソフトタイヤで再びコース上でフェルスタッペンとラッセルを抜くという戦略も有り得た。しかしフェラーリは、コース上での追い抜きというリスクより確実に前を抑える戦略を採った。ソフトで逆転できた保証はなく、その判断自体は間違いではなかったが、ハードタイヤのペース想定だけが間違っていた。

 逆に言えば、ハードのペース想定が正しければ、この判断はなかった。

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