角田裕毅が引き起こした失態の顛末。ペースの遅いガスリーにチームオーダーが出なかったのは理由があった

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

角田に挽回のチャンスは?

 相手を100パーセント信用して、今までどおりのバトルができるか? そう問われたガスリーは一瞬言い淀んだ。

「そうだね......F1ドライバーだから彼のことを信頼しなければならないね。コクピットの中でどれだけすごいことをしているのかはお互いにわかっているし、チームメイトが相手の時は1パーセントだけエクストラの慎重さを持ってバトルをするべきなんだ。

 もちろん二度と起きないと思っているし、チームメイトが相手ならいつも以上に慎重にならなければならない。今後も激しいバトルをすることは構わないけど、すべてがコントロール下に置けている状態でなければならない。それが最も重要なことなんだ」

 精神的にカッとしやすい角田の癖を直すべくレッドブルが心理学者をつけたという報道もあったが、角田はF2時代からいわゆるメンタルトレーナーのもとへ通って精神面の鍛錬をしてきた。実際にはほとんどのレーシングドライバーが行なっていることでもある。

 数戦前にそのメンタルトレーナーが替わり、まだお互いに理解を深め合っているところだというが、今回のミスは精神的な不安定さによって起きたものではないのだから、それとは無関係だと角田は言う。

 シルバーストンでは角田のミスによってチーム内に激震が走ったが、チーム全体としてそれを回避することもできたはずだ。個人のミスにすべてを求めるのではなく、チーム全体を強化し、チームの利益を最大化する絶好の機会だと彼らが捉えて自分たち自身と向き合っていれば、アルファタウリはさらに強くなれるはずだ。

 レッドブルリンクは角田にとって昨年2戦を経験しているサーキットであり、苦労した前半戦のなかでも好成績を残した場所だ。今年のマシンはダウンフォース不足で高速コーナーでマシンが滑り苦戦が予想されるが、イモラと同じように予選、スプリントレース、決勝と挽回のチャンスは大いにある。

 苦しいなかでも好走を見せ、この2戦で犯してしまったミスのもやもやを吹き飛ばすような走りを見せてもらいたい。

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