角田裕毅が引き起こした失態の顛末。ペースの遅いガスリーにチームオーダーが出なかったのは理由があった (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

ガスリーが接触を振り返る

 チームはふたりのドライバーを自由に戦わせた。

 節度を持ってバトルをするかぎり、ポジションキープやポジションスワップの指示は出さず、自由に戦わせるというのがアルファタウリの方針だった。

「レース前に『We can fight』と言われていた。つまりそれは、戦ってもいいということだ。ただしもちろん、すべてをコントロールできていればの話。彼はコントロールを失ってスピンして僕にヒットした。それがレッドブル勢4台のうち3台に大きな影響を及ぼしてしまった。これは理想的なことではないよ」(ガスリー)

 ガスリーは雨の予選でウエット寄りのセッティング(重いリアウイング)を選択し、決勝ではこれが足枷になってペースが伸びなかった。

 それが、角田を抑え込み、前のフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)からじわじわと離れていくという展開につながっていた。

 それ自体がチーム全体にとっての不利益だと言えるが、アルファタウリはドライバーふたりの純粋なバトルのほうを優先した。チームオーダーを出さなかった背景には、ガスリーがチームの意向を受けてギャンブル性の高いリアウイングを選んだことがあったのだとガスリーは示唆した。

 そしてそのうえで、ガスリーは節度を持ったバトルをしていたのだと。

「リアウイングの選択は、チームとしてのギャンブルだったんだ。フリー走行のパフォーマンスがよくなかったから、僕のほうがリスクを取ることに対してオープンだった。ドライバーにとって理想的ではないことがわかったうえで、チームとしてはこのギャンブルをやりたかった。

 僕は自分のため、チームのために自分のレースをしていた。だから相手がチームメイトであれ、何位であれポジションを争う。十分なスペースを残して、ね。実際、リプレイ映像を見たら自分が思っていた以上に大きなスペースを残していたよ」

 そこで空いたスペースにとどまりきれず接触を喫したのは、角田のミスにほかならない。5秒加算ペナルティが科されたのも当然のことだ。

 それは角田自身も認め、二度とこんなミスを犯さないよう誓った。

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