角田裕毅は「4位になれるなら、そっちを取る」。マシンが激しくバウンシングしてもパフォーマンスを優先するドライバーの性 (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

市販車のフルブレーキと同じG

 カナダでも前戦と同じく、ロードラッグ仕様のリアウイングが使用される。だが、アルファタウリは素材の変更によってすでに対策を講じ、同じ問題が再発することはないだろうと言う。

 モナコでもバクーでも、角田はマシンのポテンシャルを結果に結びつけることができなかっただけに、今週末はしっかりと結果を手に入れたい。現状のアルファタウリAT03は空力性能でやや後れを取っており、中団グループ最上位を争うことができるチャンスは決して多くないだけに、数少ないチャンスは確実に掴み獲っていかなければならないからだ。

 そんな矢先、FIA(国際自動車連盟)はカナダGPを前に新たな技術規制に乗り出した。2022年型マシンの問題となっているポーパシング現象、またはバウンシング現象を緩和するための対策だ。

 特に、長いストレートを有するうえに路面がバンピーなアゼルバイジャンGPでは、300km/hを越える走行時間が長く、多くのマシンが路面に吸いつけられては底付きして跳ね上がり、再び吸いつけられて底付きして......というのを短い周期で繰り返す「バウンシング現象」に見舞われた。

 高速走行中のマシンには、市販車のフルブレーキと同レベルの0.9〜1.3GほどのGがタテ方向に発生しているため、ドライバーの背中や脊椎、脳神経系に与える影響も懸念されている。アゼルバイジャンGPの週末にはドライバーたちからも対策を求める声が上がり、20人中19人のドライバーがこれに賛同した。

 メルセデスAMGがバウンシングに苦しんでいる様子がフォーカスされるが、アゼルバイジャンGP決勝のデータを見れば、実際にはレッドブルも同等レベルのタテ揺れが発生しており、ハースやフェラーリ、アストンマーティン等はそれ以上の激しいGを受けている。

「対策として最も簡単なのは車高を上げることだし、どんな車高でマシンを走らせるかはチームの自由だ。F1チームは安全でないマシンを走らせるようなことはするべきではない。

 問題を抱えているマシンもあれば、問題がそれほど大きくないマシンもある。であれば、設計目標を少し外してしまったチームのために(ポーパシングが出ないマシンを作った)いい仕事をしたチームにペナルティとなるようなことをするのはフェアではないだろう」

 レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表はそう語る。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る