今季のスーパーGT "初音ミクマシン"は「カッコいい系」に一新。デザイナーが語るマシンカラーリングの世界 (2ページ目)

  • 川原田 剛●取材・文 text by Kawarada Tsuyoshi
  • photo by Orihara Hiroyuki © neco / CFM

 マシンデザインのお披露目は、1月上旬に開催される世界最大級のチューニングカーの展示会、東京オートサロン。オートサロン開催日から逆算して施工作業に必要な時間を勘案すると、前年12月中旬にはマシンのデザインを完成し、データを印刷所に入稿しなければならない。10月時点で残された時間はそれほど多くなかったのだ。

 八塚さんが作ったデザイン案をベースにチームで議論し、意見を踏まえたデザイン案を再度作るという作業が繰り返された。結果として制作された案は、実に20種類以上にのぼった。

「グリーンのフラッグをマシン全面に敷いてみたり、半分にしてみたり、ちょっとサイドをホワイトにしてみたり......。手探りでいろんなパターンを用意してみました。最終的には、フラッグがクルマ全体に貼り付けられるようなイメージでいこうと決まりました。また、クラシックなレーシングカーのイメージでラインを入れてみようとの話も出ました。それで過去のレーシングカーのデザインをいろいろ調べて、自分になりにまとめていきました」

レーシングミクが持つグリーンのフラッグがデザインのポイントになったレーシングミクが持つグリーンのフラッグがデザインのポイントになったこの記事に関連する写真を見る

意見を出し合い、修正を繰り返す

 そして11月中旬、八塚さんは新たなデザイン案を完成させた。

「今年のカラーリングのポイントであるグリーンのフラッグのデザインにはすごくこだわりました。フィギュアの原型を作っている3Dモデリングチームに、3次曲線で波打つような柄のパターンを何種類か作ってもらい、マシンに乗せた時にどういう動きに見えるかと検討しました。『ちょっと詰まりすぎているよね』とか『ここは波打ちすぎじゃないか』などの意見が出て、ちょっとずつ調整していきました。

 この段階でデザインのコンセプトは固まってきました。チームが2016年にMercedes-AMG GT3を採用して以来、フロントマスクはピンクや黒で歌舞伎の隈取のようなラインを入れて、力強い印象のデザインでした。しかし今回はその方向をやめて、フロントマスクを白くシンプルにすることになりました」

 だが、フロントマスクを白くしたことで、「淡白になりすぎている」との意見が出た。その課題を解決すべく、グリーンのボディ後部に、黒っぽいデジタル風のノイズのようなデザインを加えた。

「デザインでは、マシンのスピード感を常に意識している一方で、初音ミクのデジタル感もイメージとして取り入れたいと考えました。そこで、スピードによって電子がズレたというイメージのモチーフはどうだろうかと、マシン後部に入れてみました」

フロントマスクはシンプルな白色にフロントマスクはシンプルな白色にこの記事に関連する写真を見る後部はイレギュラーな黒色の模様を入れ、デジタル感を表現後部はイレギュラーな黒色の模様を入れ、デジタル感を表現この記事に関連する写真を見る

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