フェルスタッペンvsルクレール、その差わずか0.549秒。3度目のトライでF1王者が魅せた神業オーバーテイク (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

残り10周のスプリントレース

 代わってルクレールがトップに立ち、レース中盤を支配した。

 フェルスタッペンは無理な追い上げはせず、タイヤを温存しておいてレース終盤に猛攻を仕掛ける戦略を選んだ。もちろん、フェラーリ陣営もそれを察知して同じようにタイヤをいたわり、フェルスタッペンをわずかにDRS圏内に入らせない程度のギャップを維持して周回を重ねた。

「今週末のマックスとレッドブルは、ストレート速度に強みを持っていた。DRSを使われたら簡単に抜かれることはわかっていたから、メインストレートで彼のDRS圏内に入らせないように走っていたんだ。

 ハードタイヤでもフィーリングは常によかったし、マックスを後ろに抑えてある程度のマージンを持って走ることもできていた。でも、VSC(バーチャルセーフティカー)が入ったことで彼はあっという間にDRS圏内に追い着いてきて、そこから一気にトリッキーな展開になってしまった」

 37周目にダニエル・リカルド(マクラーレン)とフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)が相次いでコース上にストップし、VSCが出されて全車スロー走行となった。マシン回収が終わり、レースは41周目に再開。残り10周のスプリントレースとなった。

 ここでフェルスタッペンが猛スパートを掛け、セクター2、セクター3と最速タイムを刻んで、一気にルクレールとのギャップを1秒以内に縮めてみせた。つまり、ルクレールが恐れたDRSが使える圏内だ。

「タイヤがどうなるかはクエスチョンマークではあったけど、VSCの間に少しクールダウンできたとはいえ、リスタートからの数周ですごくいい走りができたんだ。マシンのフィーリングがよくて、高速コーナーでもタイヤがしっかりと持ちこたえてくれた」

 そして、42周目の最終コーナー。フェルスタッペンはルクレールに追い着いてインに飛び込み、首位に躍り出た。

 いや、正確に言えば、首位に出された。

 ルクレールは早めにブレーキを踏み、ターン27入り口にあるDRS検知ポイントをフェルスタッペンの背後で通過して、次のメインストレートでのDRS使用権を確保したのだ。そしてDRSを使い、悠々とフェルスタッペンを抜き返して首位を取り戻した。まさに1週間前のバーレーンGPと同じ駆け引きだった。

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