2022版F1マシンはすべてがガラリと変わった。噂の「グラウンドエフェクトカー」のメリット、デメリットとは? (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

タイヤの巨大化で扱いやすく

 ただしDRS(※)は従来どおり装備されており、使用の可能範囲を広げるなどでスリップストリーム効果と追い抜きのバランスを調整することは可能だろう。いずれにしても、根本的な空力特性の変更によって前走車の背後についたままコーナーを駆け抜けることができるようになったことは、2022年のレースのあり方を大きく変えることになるだろう。

※DRS=Drag Reduction Systemの略。追い抜きをしやすくなるドラッグ削減システム/ダウンフォース抑制システム。

 タイヤも大きく変貌を遂げた。ホイールが13インチから18インチと大径になり、タイヤも直径が670mmから720mmへと50mm大きくなっている。

 つまり、ショルダーは約4cm分だけ扁平になっていてタイヤ自体が持つサスペンション機能が弱くなっている。だが、その影響は限定的だと見られている。1輪あたり約4kgの重量増であり、その分だけマシンの挙動はゆったりとしたものになる。

 しかしそれよりも大きいのは、これまで"扱いづらい"とされていたオーバーヒートを抑えたこと。このため、多少のスライドでもグリップを失いにくく、攻めたバトルが可能になる。

 また、それと同時にワーキングレンジ(作動温度領域)を広げ、温度に過敏すぎた特性もマイルドになっているという。

「コンパウンド間の違いも大きくなっているし、ワーキングレンジも従来よりは少し許容範囲が広いように感じるね。ただ、今回の温度では何とも言いがたいし、もっと暑いバーレーンに行ってみなければわからない部分もあるけどね」(アレクサンダー・アルボン/ウィリアムズ)

 C1からC5までの各コンパウンドは、それぞれ0.5秒ほどのタイム差が出るよう明確なグリップ差が設定され、レースでの戦略差・速度差が生まれやすくなるはずだ。

「昨年末のアブダビテストではどのマシンもフロントにグレイニング(タイヤのささくれ摩耗)が出ていて、ひどいアンダーステアに苦しんでいました。しかし今回はグレイニングが出やすいバルセロナにもかかわらず、そのような問題は出ていません。

(従来セクター3で問題になっていた)リアが厳しくなるわけでもない。タイヤウォーマーの温度が70度に下げられましたが、今回のこの路面温度でもそれほど問題にはなっていませんし、全体的には扱いやすいタイヤだなという印象です」(ハースの富塚裕エンジニア)

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