ホンダが駆け抜けた7年間の集大成。きっとまたF1に戻ってくる、挑戦はまだ終わらない (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

オールホンダ渾身のPU

 2018年のスペック3から燃焼コンセプトをしゃぶり尽くすまで開発を進め、一度は棚上げされていた"新骨格"プロジェクト。だが、F1からの撤退が決まった今となっては、最後の1年でこれを投入せずして終わるわけにはいかない、という強い思いが開発責任者の浅木泰昭にはあった。

「そろそろメルセデスAMGも伸び止まるだろう......という甘い考えでは勝てないということが2020年に証明されましたし、回生量も制御に頼っていると急に禁止されることもあることがわかりました。だから制御ではなくハードウェアでやらなければならない。そして馬力も限界に達している。ということで、新骨格の投入を2020年の後半に急遽決断し、(開発と投入を)許してもらって今年投入しました」

 バルブ挟み角を小さくすることで、パワーユニット全体がコンパクトになるだけでなく燃焼を改善し、より大きなパワーを絞り出せる。そのうえMGU-Hからの回生量も確保することに成功したのが、この新骨格のエンジンだ。

「新骨格になって重心位置も下がったので、レッドブルも喜んでくれました。しかし、本当に我々がやりたかったのは、燃焼の改善です。

 バルブの挟み角を小さくすると、ピストンの出っ張りは小さくなって、ピストンの上死点でのデコボコも少なくなる。すると燃焼しやすくなり、馬力も上がる。それに加えて、同じ燃焼ボリュームに対して表面積が小さくなり、(冷却水の)水に逃げていた熱が排気ガスに温存されるので、回生量も馬力を上げているのに下がらない。パワーを出しながらも戦える回生量になったかなと思っています」

 ホンダジェットや先進技術研究所の技術、さらには熊本製作所の熊製メッキなど、今のホンダが持つ知見を寄せ集め、オールホンダで作り上げた渾身のパワーユニット。そう語る浅木は、開幕戦バーレーンGPで敗れはしたものの、今年こそはメルセデスAMGと戦えると自信を持った。

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