F1参戦3年目、マクラーレン・ホンダはバラバラ。アロンソに「こんなことなら、去年のエンジンでよかった」と言われ... (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

【怒るマクラーレンの雇われ首脳陣】

 バルセロナでの合同テスト1回目では、ICE自体が壊れるトラブルも出た。バルセロナ2回目では、さらに進化させた最新スペックを投入してトラブルは収まったものの、前述のとおりパワーは抑えざるを得なかった。シーズンを通してスペック2、3、3.5、3.6、3.7と、小刻みに進化させていくしかなかった。

 テスト2回目には何度もコース上にマシンが止まって赤旗の原因となったが、それはパワーユニットではなくハーネス(配線)不良など車体側の問題だった。パワーユニットを疑うあまり、トラブル発生のたびに交換するのはパワーユニット側で、パワーユニットのあらゆる可能性が潰されるまでその原因究明が遅れたのも事実だった。

 RA617Hは性能不足だけでなく、信頼性不足も抱えていた。

 ターボのコンプレッサーをICEの前方に張り出させたことによって、MGU-H(※)のマウント位置低下と回生量の増大を果たした。しかし、ICE後方にあるタービンと前方のコンプレッサーをつなぐシャフトはこれまで以上に長くなり、最大毎分12万5000回転で回るために捻れや歪みが生じやすく、結果としてベアリング(軸受け)に負荷が集中して壊れ、冷却水が漏れ出すというトラブルが頻発していた。

※MGU-H=Motor Generator Unit-Heatの略。排気ガスから熱エネルギーを回生する装置。

 ホンダのスタッフが毎日のようにシャフトを交換することで、開幕戦からなんとか信頼性を保っていた。しかし、第3戦バーレーンGPではレース週末のうちに3度のトラブルが発生し、決勝前のレコノサンスラップでストフェル・バンドーンのMGU-Hが再び壊れてスタートができなかった。

 バーレーン政府系ファンドが大株主であるマクラーレンの雇われ首脳陣にとって、これは極めて都合の悪い事態だった。

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