中野信治が角田裕毅のF1初年を分析。初戦で生まれた「いけるかもの油断」、最終戦までの成長

  • 川原田 剛●構成 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 桜井淳雄、村上庄吾●写真 photo by Sakurai Atsuo, Murakami Shogo

【生き残りをかけ勝負の年へ】

 そのためにも角田選手は速く走らなければならないんです。速く走るためにはいいクルマを作らなければならないし、いいクルマを作るためには最終戦のような結果を出して、エンジニアやチームからの信頼も得る必要があります。チームの信頼が厚くなれば、クルマを作る時に角田選手に合わせていこうという好循環が生まれてきます。そのいい流れができれば、必ず結果につながっていきます。

 自分に合ったマシンを作るためには、オフの間にチームとうまくコミュニケーションをとって、スタッフと信頼関係を築いていかなければなりません。デビューシーズンの角田選手はかなり乱暴な無線もあったし、ちょっとエキサイトしすぎる部分がありました。若さに加え、やっぱり英語がネイティブではないので、どうしても言葉遣いが乱暴になってしまっていたと思います。

 でもデビュー当初のハミルトンやフェルスタッペンだって、角田選手とそれほど変わらなかったと思います。ミスも多かったですし、チームとのコミュニケーションがうまくいかないこともありました。みんな最初はそうなんですが、勝てるドライバーはレースを重ねるなかで自分のメンタルをコントロールし、周囲を味方につけていく。レースの強さにつながることを学んで、実践していきます。同じようなスマートな成長を角田選手にも期待しています。

 2022年は間違いなく角田選手にとっては勝負の年になります。このオフの間に開幕から実力を発揮できるようにしっかりと準備してほしいです。

(終わり)

【Profile】 
中野信治 なかの・しんじ 
1971年、大阪府生まれ。F1、アメリカのCARTおよびインディカー、ルマン24時間レースなどの国際舞台で長く活躍。現在は豊富な経験を活かし、SRS(鈴鹿サーキットレーシングスクール)副校長として若手ドライバーの育成を行なっている。また、DAZN(ダゾーン)のF1中継や2021年からスタートしたF1の新番組『WEDNESDAY F1 TIME』の解説を担当している。

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