ハミルトンとフェルスタッペンはどちらがすごいのか? 元F1ドライバーが「速さ」と「メンタル」を比較 (2ページ目)

  • 川原田 剛●構成 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 桜井淳雄、村上庄吾●写真 photo by Sakurai Atsuo, Murakami Shogo

 フェスタッペンのほうが速さでは少し上かもしれませんが、メンタル面ではハミルトンが上回り、ふたりの力関係は互角に見えました。だから最終戦のアブダビGPでフェルスタッペンが優勝し初タイトルを手にしましたが、チャンピオンはふたりにあげたかったというのが僕の本音です。

 ハミルトンとフェルスタッペンの速さは圧倒的ですが、他のドライバーがダメだというわけでは決してないんです。速さという部分では、たぶん、他のドライバーも同じようなところにいると思います。実際にバルテリ・ボッタスは予選に関してはハミルトンと遜色ない走りをしていました。

【速さだけでは勝てない世界】

 でもチャンピオンになるのはやっぱり速さだけではないということを2021年のシーズンはあらためて証明したと思います。大事なのはメンタルをコントロールする能力。いい時は誰もが自分の力を発揮できるんです。でもF1に限らず、スポーツの世界では一番厳しい状況の時にいかに実力を100%発揮できるどうかで、大きな差になっていきます。

 その部分を完璧にできているのがハミルトンです。メンタルコントロールという部分では、フェスタッペンはまだハミルトンの領域にたどり着けていないと思います。アブダビGPでのスタートのミスでも明らかです。それでもメンタル面はこれからもっと成長するだろうし、将来的にはハミルトンの7回を上回るチャンピオンになる可能性は十分にあると思います。

 フェルスタッペンは初めてのタイトルを獲得したことで、心に余裕ができ、強さにますます磨きがかかるでしょうね。ドライビングについてはリスクが高いと言われることがありますが、彼は異次元の選手なんです。普通のドライバーにとってはリスクの高い走りに見えても、彼としてはしっかりとコントールできているんだと思います。それだけの彼の能力はずば抜けています。

 とはいえ、アグレッシブな走らせ方で今後もずっと臨むのは難しいと思います。ハミルトンも若い頃はフェルスタッペンのようなドライビングをしていました。しかし速いだけじゃ勝てないとことに気がつき、自分を変化させて、これまで7度も世界タイトルを獲ってきました。そういう意味で、フェルスタッペンが初めてのタイトルを手にしたことでどう変化していくかというのは今後の見どころだと思います。

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