角田裕毅の苦難に満ちたF1ルーキーイヤー。自信をへし折られ、遠回りし、ついに新しい世界が見えた (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

【中高速コーナーに自信の表われ】

「とてもうれしいです。今週末は全体を通してペースが非常によかったですし、レースペースもあそこまでいいとは正直思っていませんでした。最後は(バルテリ・)ボッタスを抜いて4位でフィニッシュすることができましたし、この結果にはとても満足しています」

 今季一度も予選で上回ることができなかった僚友ガスリーを、ついにこのアブダビで上回った。ガスリーはここ数戦、マシンの扱いに苦戦しながらも予選Q3までに合わせ込むという綱渡りの戦いを続けていたが、今回はQ2で敗退を喫し、角田が初のアウトクオリファイを果たした。

 中低速コーナーではガスリーと同等かそれ以上の走りを見せ、これまでやや差をつけられていた高速コーナーでもその差をかなり縮めてきた。バンク角のついた新設ターン9も鋭角なV字ラインで巧みにクリアしていた。中高速コーナーの速さはすなわち、マシンへの自信の表われだ。

 決勝ではガスリーもハードタイヤスタートで引っ張り、VSC(バーチャルセーフティカー)のタイミングを利して角田の背後までポジションを上げてきたのはさすがだ。しかし、角田はガスリーを寄せつけずに自分のレースを続けた。

 レース前半は1周目に抜いたメルセデスAMGのバルテリ・ボッタスを抑え、結果的にそれがマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)のタイトル争いを大きく援護射撃することになった。ボッタスが14秒以内にいればフェルスタッペンはVSCでもSCでもピットインできず、最後のあの大逆転劇は生まれなかったからだ。

 ボッタスには第1スティントを引っ張られてオーバーカットを許し、それ以降はついていくことはできなかった。しかし、ピットアウト直後の勢いを生かしてインに飛び込んできたフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)はうまく避け、次の周に冷静に抜き返してみせた。その後のペースは大きく違い、アルファタウリ勢は7位・8位で後続を大きく引き離した。

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