2021.12.11

マクラーレン・ホンダ2年目、パワーは着実に上昇。足を引っ張っていたのはマシンのほうだった

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

【新井総責任者が果たした役割】

「ソチでいえば、予選モードのひと声で0.2秒くらい変わる。レースが50周なら10秒速くフィニッシュできるわけです。その10秒で順位が変わらない場合もありますが、10秒速ければポジションがひとつ上がるという場合もありますよね。そういうマネージメントをしてみたらどうだ、という議論をして、トライする価値があるならやってみようという結論に至ったわけです」(長谷川F1総責任者)

 ロシアGPでは、バトンがメルセデスAMG製パワーユニットを搭載するフォースインディアのセルジオ・ペレスを追いかけ回し、10位でフィニッシュした。

「ジェンソンはずっと最後まで競っていましたけど、もし予選モードを使っていなければ、あそこまで追い詰めることができなかったかもしれないと思います。我々としてはやりきったという感がありますし、非常にいいレースでした」(長谷川F1総責任者)

 ホンダのパワーユニットRA616Hは、決して劇的な飛躍を遂げたわけではない。だが、初年度の失敗と教訓を生かして改良を進め、開発制限のためシーズン中には果たせなかったMGU-H(※)の刷新、そしてパワーの本丸であるICEの燃焼系を着実に進歩させてきた。

※MGU-H=Motor Generator Unit-Heatの略。排気ガスから熱エネルギーを回生する装置。

 シーズン開幕を前に、第3期のチーフエンジニアであった長谷川が総責任者に就任したが、RA616H自体は2015年シーズンを戦いながら前任の新井康久総責任者が開発の指揮を執ってきたものだ。

 準備不足のまま挑まなければならなかった初年度の結果だけで、新井総責任者に批判的な声が投げつけられることも少なくなかった。だが、2015年の"実戦テスト"と並行して開発が進められてきたRA616Hの仕上がりにまで目を向ければ、2013年の基礎研究から新井総責任者が果たしてきた役割は決して小さくなかったことがわかるだろう。