フェルスタッペンが再び「F1界のルール」を破ってペナルティ。なぜ同じ過ちを繰り返すのか (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

【問題視されたフェルスタッペンの振る舞い】

 一般の市販車でフルブレーキングをしても減速Gは1Gなのに対し、この時のフェルスタッペンの減速は2.4Gだった。どれだけの急減速であったかがわかる。

 フェルスタッペンは「譲るべく減速したのに、ハミルトンが抜いていかなかったのは理解できない」と訴えた。だが、戦略的に抜かせようとする自由もあれば、戦略的に抜かない自由もあるのだから、ハミルトンが抜いていなかったのは当然だ。問題はそこではなく、レーシングライン上で、本来ブレーキングをするはずのない150メートル手前で急減速をしてしまったことだ。

 これに対して、スチュワードはレース後に双方の言い分を聞いたうえでデータや映像を精査し、フェルスタッペンに事故責任の大部分があるとして10秒加算ペナルティを科した。問題は譲る意思の有無や妥当性ではなく、単純に危険なブレーキングをしたということだ。

 フェルスタッペンはここからターン2のカットに対して5秒加算ペナルティを科されるであろうことを前提に、ハミルトンを5秒以上引き離して勝とうと試みる。しかし、それがわかっているハミルトンも必死に食らいついていき、手負いのマシンにもかかわらずフェルスタッペンを上回るペースで周回を重ね、42周目には再び背後へ。

 引き離すことをあきらめたフェルスタッペンは、ターン25〜26で一瞬だけハミルトンを先行させて再びターン27でインに飛び込んで抜くという「アリバイ作り」を試みた。しかし、スチュワードはこれをポジションの譲り返しとは認めず、5秒加算ペナルティが科されてしまった。

 結局、VSC(バーチャルセーフティカー)走行が長かったにもかかわらずフェルスタッペンのリアタイヤはタレてしまい、43周目にはハミルトンがインに飛び込んでパス。その後は7秒引き離されて、2位確保の走りをするしかなかった。

 結果論とすれば、ミディアムタイヤを選んだことで負けた。予選では速さがあったが、決勝ではメルセデスAMGに敵わなかった。

 だが、それ以上に問題視されたのは、フェルスタッペンの振る舞いだった。

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