アロンソ「GP2!」発言の真相。復帰1年目のホンダは駆け引きの術を知らなかった (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

 しかし、マシンが止まったのは「バッテリーからシャシー全体に電気を供給するメインの電源コネクターがきちんとハマっていなくて、走行中にそれがルーズになって最終的にシャットダウンしてしまった」ため。それ以外にも、ギアボックスやハーネス(配線)など、パワーユニットだけでなく車体側のトラブルも多々あった。

 つまり、未成熟なパワーユニットも大きな足かせになったが、そのコンパクト差と引き換えに得るはずだった車体側の性能不足や熟成不足も、低迷した理由だったのだ。

 そんななかで、ランキング9位という成績低迷の責任者探しはシーズン中盤に早くも始まっていた。

 第9戦イギリスGPでは「いつまで総責任者のポジションにいられると思っていますか?」「このプアな結果が与える商業的な影響は? 優勝争い、表彰台争いをするまで、どのくらい耐えられるのか?」といったトゲのある質問がイギリスメディアから新井総責任者に投げつけられた。第12戦イタリアGPでは「ドライバーにどう謝罪するのか?」といった質問から個人攻撃まで展開されるようになった。

 マクラーレンの雇われ首脳陣たちとしては、新井総責任者をスケープゴートにして自分たちの保身とスポンサーへの面目を保った。同時に、ホンダからの莫大な資金的サポートは引き続き受け取るという狙いも明らかだった。

「成績が出ないからその理由をどこかに押しつけようとして、ホンダ側に、もっといえば私個人に押しつけている。チームとしても、スポンサーを得て経営しているわけですから、(スポンサーに対して)『私たちは悪くないんです』って言うしかありませんから。(世間にチームの実状が伝わるのは)難しいと思いますが、せめて応援してくれている日本のファンの人たち、ホンダの人たちには、日本語で真実が伝わるようにと思って、こうしてお話しさせていただいています」

 イタリアGPで総攻撃を受けたあと、新井総責任者はひっそりとそう語っていた。

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