ホンダF1第4期、7年間の歩み。復帰戦を目指す3カ月前、事態はあまりに深刻だった (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

 翌テスト2日目は、午前9時からの走行に向けて必死の準備が進められて暖機運転のエンジン音が響いていたものの、セッション開始直前になって問題が見つかり、コースインを果たせたのは午後4時28分になってから。インストレーションチェックのあと、走行を開始したところで再びコース上に止まってしまった。

 マクラーレンとホンダの初めてのテストは、2日間でわずか5周。それも、一度たりともコントロールラインを通過することはできず、ラップタイムを記録することはできなかった。

「システムが起動していくプロセスが不安定で、エンジン始動までいけないという感じでした。電源が入らないから、回せないという状態です。パワーユニットがダメとかいう以前の問題で、それぞれのコントローラーが起動する途中で引っかかってしまうという電気系統の問題です」

 当時の指揮を執っていた新井康久総責任者は、なかなかエンジン始動にまで至ることができない理由をそう説明していた。

 シルバーストンで事前にシェイクダウンを済ませていたとはいえ、その後に配線の取り回しなどを変更しており、極めて複雑なパワーユニットに付随する無数のコントローラーユニットをスムーズに起動させるのは至難の業だった。

 結局のところ、あらゆるERS(ハイブリッド)部分を無効化して切り離し、V6ターボエンジンのみで走らせることでコースへと送り出さざるを得なかった。それでも、たったの5周しか走ることができなかったのだ。

 そのわずか3カ月後には、メルボルンで2015年シーズンが開幕する。テストまでは2カ月しかない。本当に間に合わないのではないか。スタッフたちの間からそんな声が出るほど、事態は深刻だった。

 このテストのためにアブダビへとやって来たホンダのスタッフたちは、テスト前日からテスト2日目の朝まで徹夜で次々と見つかる問題の対処に当たり続けた。予約していたホテルにチェックインしないまま、3日間が過ぎてしまったほどだった。

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