フェルスタッペンとハミルトンの危険なバトル。大きな代償を払ったのはどっち (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

 そしてリアタイヤの性能低下が進んでスライド量が増え、22周目にピットインしようとした矢先にリカルドに入られ、フェルスタッペンは死にかけのタイヤで1周長くステイアウト。これでタイムロスを喫してリカルドを逆転する可能性が薄くなったうえ、翌23周目にピットに飛び込むと右フロントタイヤの交換作業完了がピットシグナルに伝わらず、11.1秒のタイムロスを喫してしまった。

 2秒を切る驚速のピットストップで知られるレッドブルだが、人間の反応速度を超えるジャッキダウンを可能にするシステムの使用がシーズン後半戦に入ってから規制され、その影響が及んだものと思われる。

 その結果、フェルスタッペンは翌周ピットインしたランド・ノリス(マクラーレン)に抜かれ、さらにはその翌周にピットインしたハミルトンまでピット出口でフェルスタッペンの前に姿を現わした。

 ここで先行を許せば、マクラーレン勢を抜けず4位。タイヤ戦略の違いからミディアムタイヤを履いたハミルトンは、ハードタイヤのマクラーレン勢を抜いてトップまで駆け上がるかもしれない。当然ながら、アウトラップからミディアムのハミルトンは、ハードを履く自分よりも速いペースで走る。

 つまり、フェルスタッペンにとっては第1シケインが、ハミルトンの前に居座るラストチャンスだった。

 ハミルトンは288km/hでターン1に先にアプローチし、フェルスタッペンに1台分のスペースを残す範囲内の最適なラインでターン1に入っていった。一方、フェルスタッペンは334km/hでブレーキングを遅らせ、アウト側に空いたスペースからハミルトンの横に並びかけようとする。

 次のターン2へ向けて、ハミルトンは通常よりもわずかにエイペックスまでの距離をとって、フェルスタッペン車を避けつつターンイン。フェルスタッペンはターン2のインに空いたスペースに2台並んで飛び込もうとするが、ハミルトンがターンインするに従ってスペースはなくなり、緑色のランオフエリアに左側タイヤを落としながらもあきらめずに直進する。

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