中野信治が角田裕毅のドライビングを分析。「あまりにもったいない」と考えたことは? (3ページ目)

  • 川原田 剛●文 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo

 逆に、ガスリーのドライビングはアルファタウリのマシンに合っていると思います。ガスリーはブレーキを踏んでしっかりと止めて、ハンドルをガンと切ってマシンの向きを変えてコーナーリングしていくタイプ。対して角田選手は比較的早めにブレーキングを終わらせて、さらっとクルマをコーナーに放り込んでいくイメージです。止めて曲げるというより、止めて放り込んでいくようなタイプ。そういう違いがあります。

 ガスリーの走らせ方は(アンダーステアで)曲がりづらいと言われるアルファタウリのクルマをしっかり曲げられますが、角田選手の場合は曲がらないままになってしまう傾向にあると思います。でもレッドブルのような(オーバーステアで)曲がるクルマには角田選手のドライビングが合っていて、ガスリーよりも速く走れるはずです。

 角田選手がアルファタウリのクルマに合うようにドライビングを変えればいいじゃないかと思う人もいるでしょうが、それは簡単ではありません。やっぱりドライバーはそれぞれ"一番速い走らせ方はこうだ"っていうのを自分のなかに作り上げているので、なかなか変えられないのです。

 それに当然、角田選手はすでにガスリー寄りのドライビングをトライしていると思います。でも、今のトレンドではガスリーの走らせ方はちょっと特殊ですし、F1のレベルで誰かのモノマネをしたからといって一番速く走れるようになれるはずがないんです。

 だからといってマシンを角田選手に合わせて大きく変えることもできません。マシンはデザイナーの設計哲学に基づいて作られていますので、完成した時点でもう特性は決まっています。アンダーステアだからといってそれをオーバーステアに変更すれば、マシンのよさも消えてしまうのです。結局はドライビングをマシンに合わせていくしかありませんが、サーキットの特性によってはマシンのセッティングの方向性が角田選手のドライビングとピタっと合うことも何度かあると思います。

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