中野信治も驚いた元世界王者ふたりの活躍。今季F1でベテランはなぜ再起できたのか? (4ページ目)

  • 川原田 剛●文 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo

 だから限界点が高いドライバーはその付近でのコントロールにすごく余裕があるんです。逆に限界点が低い人は、もうその付近でいっぱいいっぱいになってしまう。フェルタッペンやハミルトンは限界のレベルがすごく高い次元にありますが、ノリスも今季タイトルを争うふたりと同じようなスピード感覚を持っていると思います。

 ノリスは感覚的に走るドライバーですが、23歳のラッセルは業師です。他のマシンに比べてダウンフォースの少ないウイリアムズのクルマをあれだけうまく止めて、細かくタイムを稼いでいきます。彼のドライビングには無駄がないし、ミスもない。ひとつのコーナーというよりはコース1周でどういうふうにタイムを稼いでいくかというのを感覚的に感じとって完璧にまとめてきます。その集中力は見事ですね。

 彼もある意味、天才です。クルマのよいところと悪いところを理解して、緻密に計算されたかのように走ってしまう。まるでコンピューターのよう。4度の世界チャンピオンに輝いたアラン・プロストにちょっと似ているかもしれません。

 そのラッセルは来季メルセデスに加入するという噂が出ていますが、彼が活躍するにつれてハミルトンのチームメイト、ボッタスの流れが悪くなっています。これは復活したベテランのベッテルやアロンソとは逆の現象が起きているのではないかと僕は思っています。

 ボッタスは決して悪いドライバーではありません。落ち着いて戦っている時は速さがありますし、確実に仕事をこなしてきます。ハミルトンのようにシーズン通して安定した速さを発揮できるかと言えば難しいと思いますが、自分に合ったサーキットでは時にはハミルトンを上回るスピードを披露します。

4 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る