中野信治も驚いた元世界王者ふたりの活躍。今季F1でベテランはなぜ再起できたのか?

  • 川原田 剛●文 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo

 ハンガリーGPでルイス・ハミルトンと超接近戦のバトルを繰り広げましたが、当たるところまでいかないですよね。ハミルトンでさえ、ちょっと遠慮しています。相手に引かせるとい言いますか、"これ以上、接近したら当たるからな。わかっているよな"という気迫があります。そういう意識を相手に植え付つけることはすごく大事なんです。アロンソのバトルの巧さやチャレンジ精神というのは若いドライバーたちにはぜひ見習ってほしいですね。

 前半戦はベテランだけでなく若手ドライバーも光りました。特に印象に残ったのはマクラーレンのランド・ノリスとウイリアムズのジョージ・ラッセルです。現在21歳のノリスは若い頃のハミルトンのようなキレ味の鋭い走りをします。簡単に言うと、誰よりも早くクルマの向きを変えて早くアクセルを踏むというドライビングです。あの大きなF1のマシンをまるでゴーカートのように向きを変えて、もう自由自在に操ることができます。

 オーストリアGPでのノリスとマックス・フェルスタッペンの走行データを見たのですが、持っているスピード感覚がすごく似ています。コーナーを駆け抜けていく時のアクセルの抜き方や踏み方などのデータを見ると、将来、確実にワールドチャンピオンの候補のひとりになると確信しました。

 ノリスが特に優れているスピード感覚というのは、限界を見極める能力です。これは教えてもなかなか身につかない感覚で、生まれ持ったセンスと言ってもいいかもしれません。

 日本のレースと異なり、ヨーロッパは路面のミュー(摩擦係数)やタイヤのグリップも高くないので、限界を見極めることがすごく難しいのです。さらに言えば、ヨーロッパのレースでは大体、ここが限界だとドライバーが感じたところのちょっと先に本当の限界があります。その領域で走れないと一流ドライバーとは言えません。

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