スーパーGTで見事な新旧対決。ホンダ絶対エースはトヨタ次世代エースの度量を称えた

  • 吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro
  • 吉田成信●撮影 photo by Yoshida Shigenobu

 今もっとも勢いがある若手ドライバーのひとりだけに、今回のレースでは1号車を再び追い抜いてGT500初優勝を飾るだろうと、メディア関係者の多くが結末を予想した。

 宮田はトップを奪うべく、何度もオーバーテイクを試みる。しかし、なかなか1号車も隙を見せない。攻略しようとしている相手は、スーパーGTで2度、スーパーフォーミュラで3度の年間王者を経験している山本尚貴だ。王者の壁を突き崩すのは、そう簡単ではなかった。

 後方から何度もプッシュを受けると、逃げる側は精神的に追い詰められ、最後は勝負もあっけなく決まってしまうことが多い。しかし山本にとって、"追いつかれること"は想定の範囲内だった。

 その時の状況を、山本はこのように振り返った。

「レースの序盤を見ていても、あのコンディションでは19号車のほうが速いのはわかっていました。幸いピットストップで逆転できたので、あとは"どう守り切るか"でした。順当に速さだけで競い合っても、それでは太刀打ちできないなと思いましたので。

 無理に逃げようとしてタイヤとブレーキを酷使してしまうと、余計に苦しくなる可能性がある。だから無理に逃げようとはせずに、相手を引きつけることにしました」

 ツインリンクもてぎは追い抜きのポイントが少なく、勝負どころは限られてくる。そこで山本は、あえて接近戦に持ち込むことで背後から迫る宮田の強みを消す作戦に出た。

 さらに山本は、前で逃げている状態にありながら、相手の隙を探っていたという。

「正直、すぐにやられるかなと思ったんですけど、(宮田選手が)後ろについてから1周くらい、狙いにくる素振りをあまり見せてこなかったんです。無理にでもインに飛び込んでくる素振りがあれば、相手にまだ余裕があるだろうと思ったかもしれませんが......その動きがなかったので『たぶん相手も余裕はないな』と瞬時に察知しました」

 山本の読みは当たっていた。

 一方、宮田もファステストラップを更新する勢いを見せていたが、いざ1号車の背後につくと、勝負できるほどの余裕はなかったという。

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