レッドブル・ホンダ5連勝でF1界を席巻。メルセデスAMG代表も完敗を認めた

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

 もちろん、それはエンジンパワーだけで達成できたことではなく、薄いウイングを使い空気抵抗を減らして得たものだ。しかし、マシンのトータルパッケージとしてホンダの大きな躍進があったからこそ、RB16Bはここまで高い次元での妥協点を見つけ出すことができている。

 1週目のシュタイアーマルクGPでは、ストレート区間だけで0.25秒の差をメルセデスAMGにつけた。そして2週目のオーストリアGPでは、コーナーも含めあらゆるエリアで速い高次元のセットアップに仕上がった。フェルスタッペンのマシンにはフランスGPに続いて新しいフロントウイングやバージボードが投入され、マシンのアップデートも着々と進んでいる。

 レース後、メルセデスAMGのトト・ウォルフ代表は、完敗を認めた。

「ターン1、3、4など、どこか1箇所や2箇所ではなく、あらゆるところで少しずつ負けていたんだ」

 ホンダがフランスGPで投入した今季2基目のパワーユニットから10kW(約13.6馬力)向上したことで、パドックでは「レッドブルが恩恵を受けている」との噂がまことしやかに囁かれていた。だが、現在のレギュレーションではシーズン中のアップデートは許されておらず、破損発生箇所やコスト改善目的の設計変更のみが許されている。もちろん、メルセデスAMGを含め他メーカーもその変更内容を「性能向上なし」と承認したうえで、ホンダは投入が許された。

 ホンダの優位は、ICE(エンジン本体)よりもERS(エネルギー回生システム)だ。最大出力はどのメーカーもほとんど差がないところまで来ている。そのなかで差が生じるのは、MGU-H(※ターボ回生)からの電気エネルギー確保だ。

※MGU-H=Motor Generator Unit-Heatの略。排気ガスから熱エネルギーを回生する装置。

 そのエネルギー量が多ければ、決勝の連続走行中もERSのアシストが切れる時間は短くなるし、使い方の面でも様々な余地が生まれる。その部分でホンダが優位に立っているとウォルフ代表は語る。

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