レッドブル・ホンダ、劇的な大逆転勝利の裏側。「我々に失うものはありません」メルセデスAMGより先に動いた (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

 その一方でレッドブルは、セルジオ・ペレスの第1スティントを24周目まで引っ張り、ボッタスより7周もフレッシュなタイヤでレース後半へと送り出した。そのペレスがすぐ後ろに追い着いてきたことで、メルセデスAMG勢は2ストップ作戦に切り替えることに二の足を踏んだ。コース上でペレスを抜かなければならなくなるからだ。

 フェルスタッペンに攻めの2ストップ作戦を与える一方で、ペレスには堅実な1ストップ作戦を与えて万一に備える。そのペレスはボッタスを抜き去り、あと2、3周あればハミルトンに追い着いて逆転する可能性さえあったほどの追い上げを見せた。

 決勝において決して優位にあったわけではないマシンながらも、レース戦略で1位・3位のダブル表彰台を手繰り寄せた。2対2の戦いで、ペレスの存在がフェルスタッペンの戦略を支え、そしてそれぞれが相手との戦いを制してこの結果を掴み取った。

 ポール・リカールには、1カ月前のバルセロナとは真逆の、見違えるような進化を遂げたレッドブルがいた。ホンダの田辺豊治テクニカルディレクターはこう語る。

「チームはレース毎に進化すべく新しいパーツを投入して来ていますし、我々も今年の新しいパワーユニットに合わせたエネルギーマネジメントなどの使い方を学び、次のレースに向けた特性を見ながらセッティングしていきます。これらの日々の開発が、パフォーマンス向上に結びついているのかなと思います」

 メルセデスAMGがこれまで圧倒的な速さを見せてきたポール・リカールで、大接戦を制した意味は大きい。しかしその接戦が物語るように、勝利の針がどちらに振れるかは紙一重だ。

「今日のレースを見てもらえればわかると思うけど、僕らはずっと激しい戦いを繰り広げていた。おそらくシーズンの残りのレースも、ずっとこういう展開になると思う。自分たちの最大限の力を発揮することに集中するしかないことに変わりはない。その結果として、相手が(自分の後ろにいて)ミラーに写っているかどうかというだけだ」

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