角田裕毅、F1キャリア台無しの危機。もうクラッシュは許されない

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

 決勝の走りがよかったとか悪かったではない。予選でピエール・ガスリーが6番手に持っていったAT02本来の実力位置につけられなかったことが最大の問題であり、その原因はFP2の不用意なクラッシュにあった。レース週末全体を見渡せば、角田に与えられた評価はこうだった。

 さらに言えば、それ以前の4戦でも角田は、本来のグリッドからほど遠いところでレースをしてきた。開幕戦バーレーンはQ2落ち、第2戦イモラはQ1でクラッシュ、第3戦ポルティマオは初体験のサーキットに苦戦し、予選14位で3戦連続Q3進出のガスリーに0.4秒差。そして第4戦バルセロナでも苛立ちを抑え切れず、Q1でミスを犯して敗退......。

 角田はまだアルファタウリ本来の位置からスタートしたこともなければ、同等の戦闘力を持ったライバルと決勝の305kmを通して戦ったこともない。最終的な結果が何位かではなく、まずはその同じステージに立たなければ評価も何もない。

 同じステージに立つためには、まずは予選だ。予選でガスリーと同等とまでは言わなくても、彼が戦っているマクラーレンやフェラーリ、レースによってはアルピーヌ勢と戦える位置に追い着く必要がある。

 バクー・シティ・サーキットは、セクター1は90度コーナーが多く、速度域のほとんどが90〜100km/hの幅に収まる。長いストレートが2本あり、ダウンフォースをいかに削るか、そしていかにタイヤとブレーキの温度を保つかが難しい。しかし、モナコほど熟練のテクニックが求められるコースではなく、オーバーテイクも可能だ。

 そんなアゼルバイジャンGPで、角田にはF1で初めて本当のバトルを見せてほしい。それを経験することで角田自身も一歩成長し、次のステップが見えてくるはずだ。

 この次には再びヨーロッパに戻って3週連続開催が待ち受けており、シーズンはあっという間に過ぎていく。間違いなく、このアゼルバイジャンGPは角田裕毅にとって正念場になるはずだ。

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