ホンダF1を救ったトロロッソとの相思相愛。取り戻したプライド (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 こうして生まれたのが、2018年型マシンのトロロッソSTR13だった。

 9月というかなり遅い時期までパワーユニット決定がずれ込んだため、トロロッソは当初計画していたルノー製からホンダRA618H搭載のための設計変更を強いられた。そのため、まずはパワーユニット変更に対応することをマシン開発の主眼とし、マシン前半部分はそのままに、後半部分のモノコック変更や冷却レイアウト変更に集中した。

 一方的に完成品のパワーユニットを供給されるカスタマーとは違い、ワークス供給は車体側の要求とパワーユニット側の要求を擦り合わせながらマシンパッケージを開発していく。そのメリットを最大限に生かし、スリムでコンパクトなリアエンドを実現した。長きにわたって予算に制約のあるなかでマシン開発を続けてきた中堅チームのトロロッソらしく、堅実かつ効率的なマシン開発が功を奏した。

 トロロッソのフランツ・トスト代表は、1998年にフォーミュラ・ニッポンに参戦したラルフ・シューマッハのマネジャーとして来日。日本で1年間を過ごし、日本の文化や企業文化をよく知る人物だ。

 その彼とともに働くチームスタッフは、全員が文化講習を受けて日本人との付き合い方を学ぶという歓迎姿勢をとった。ヨーロッパと大きく異なる日本人の考え方や行動様式を知ることが、このプロジェクトをスムーズに進めるためには必要不可欠だということを、トスト代表が熟知していたからだ。

 ホンダも浅木のもと、目先のアップデートではなく、地に足をつけた開発アプローチへと切り替えた。2017年型をベースに信頼性確保を最優先としたRA618Hを作り上げ、トロロッソが開幕前テストをしっかりと進められることを最優先とした。

 最大の課題であったMGU-Hの設計刷新に手間取って開幕戦には間に合わなかったが、第2戦のバーレーンGPに投入すると、トロロッソ・ホンダSTR13はいきなり快走を見せた。

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