ホンダF1を救ったトロロッソとの相思相愛。取り戻したプライド (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 そこからの3年間で、マクラーレンとホンダの関係はさらに悪化していった。

 技術面では双方のエンジニアたちが力を合わせ、英国ウォーキングとHRD Sakuraを行き来して改善努力を続けていた。だが、マクラーレンの経営を任された「雇われ首脳陣」たちは保身のためにこれ以上の成績低迷を許容できず、2017年のシーズン序盤にはすべてをホンダのせいにして関係を断つべく動き始めた。

 ホンダはマクラーレンと独占供給契約を結んでおり、レッドブルやトロロッソとの供給交渉を進めたことはあったものの、ロン・デニス代表の強い反対にあって2チーム目の供給は頓挫していた。そのため、マクラーレンに捨てられれば供給先がなくなり、F1からの撤退を余儀なくされる。

 そして、7月のイギリスGPでマクラーレンとの決裂は決定的となる。サマーブレイクの頃にはそんな危機的状況に直面していた。

 そんななか、ホンダとタッグを組むことを選んでくれたのが、トロロッソだった。

 もちろんその背景には、頂点に返り咲くためにパワーユニットのワークス供給を望むレッドブルの意向があり、その先遣隊としてトロロッソが抜擢されたことは言うまでもない。しかし当時、パワーも信頼性もないと酷評されたホンダにスイッチすることを受け入れるのは、相当な覚悟を伴うことだった。

 9月に入ってからの数週間で、マクラーレン、トロロッソ、ルノー、FIA(国際自動車連盟)とFOM(フォーミュラ・ワン・マネジメント)が協議し、マクラーレンとトロロッソの間でのパワーユニット交換が決まった。

 これによって、ホンダはF1撤退の危機を脱する。

 ホンダは、総責任者が開発と現場の両方を統括するという体制を改め、開発責任者には第2期F1活動に携わった浅木泰昭、そして現場責任者であるテクニカルディレクターには第2期・第3期を経験してきた田辺豊治を呼び戻し、2018年シーズンに挑むことを決めた。

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