角田裕毅、速さは本物。スーパールーキーの真骨頂は次戦のお楽しみ

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

 ルーキーにとって初戦は、完走が至上命題になる。

 それゆえ、スタート直後のホイールスピンで出遅れた角田は、ターン1以降の攻防でも集団の中で接触を避けるためにコンサバティブにならざるを得ず、次々と抜かれて位置は17位までポジションを落としてしまった。

「1周目にフロントウイングなどをぶつけないようにすることを意識しすぎて、ディフェンス側に寄り過ぎ、アグレッシブに行かなさすぎて、そのせいでポジションを落としてしまったんです。そこからかなりポジションを挽回するばかりのレースになってしまって、実際にはかなり速さがあったのにリカバリーに時間と労力を使われてしまったので、次への大きな課題がそこ(1周目の攻防)かなと思います」

 しかし角田は、そこから安定した走りで戦略の異なる前走車たちを次々にパスし、ポジションを上げていった。

 フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)やセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)など、ベテラン勢も易々と仕留めていった。彼らも戦略が異なるだけにタイヤ状況が大きく違うため、抵抗することなく角田を前に行かせた。

 終盤はタイヤがタレてペースの上がらないランス・ストロール(アストンマーティン)に追いつき、ストロールの乱流でなかなか追い詰めきれなかったものの、最終ラップのターン1で「ここで行かなきゃ今夜は眠れない!」と意を決してインに飛び込び、抜いて9位でフィニッシュして見せた。

「意識せずガムシャラに前を狙って走っていました。あそこから追い上げてポイントを獲れたのは、最低限の結果だったかなという感じです。ちゃんとレースを終えることができたのは自分にとって大きなことですし、次へつながる本当にいいレースだったと思います。そこはポジティブに捉えて、あとは本当に反省しなきゃいけないところは反省して、次につなげたい」

 角田のスマートなレース運びとバトル勘、そしてアルファタウリの速さは間違いなく証明された。

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