中野信治が角田裕毅に感じる「天性の速さ」。勝つために必要なものは? (3ページ目)

  • 川原田剛●文 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 桜井淳雄、村上庄吾●撮影 photo by Sakurai Atsuo, Murakami Shogo

 2021年シーズンのF1には角田、ミック、マゼピンがデビューします。3人のルーキーの中で角田は一番レベルが高く、急激に成長を遂げていると思います。3人ともにうまいし速い。特にF2でチャンピオンになったミックは、マシンをコントロールして走っていましたし、安定感もある。どんなレースでも生き残る強さや頭のよさも感じます。でも角田はミックの能力を凌駕するうまさや戦い方があると思います。

 今シーズン、角田が表彰台に上がっても、勝っても僕は驚きません。実際に昨シーズン、ガスリーは勝っているわけですし、今年のマシンは例年以上にいい仕上がりだと思います。いい流れをつかむことができれば、勝つ可能性はあるとみています。

 ただ角田が他のF1ドライバーと比べて図抜けているというわけではありません。今、F1のフィールドで戦っているドライバーはいいクルマに乗れば、みんな速く走ってしまう。それだけの運転技術は誰もが持っています。それは昨シーズンの終盤、新型コロナに感染して欠場したルイス・ハミルトンの代役を務め、いきなり優勝争いをしたジョージ・ラッセル(ウィリアムズ・レーシング)を見ればわかります。

 マシンの限界を引き出して速く走るというレベルから、さらに一歩抜きんでていくためには、次のステップが必要になってきます。それはクルマを作り上げていく能力であったり、ハミルトンのようにチームをまとめ、自分のために動かしていく能力です。トップチームでは、そういうことを全部ひっくるめてのドライバーとしての総合能力が問われます。それは第2の壁なんです。

 いずれ角田も壁にぶつかることがあると思いますが、そのときがワンランクステップアップできるタイミングです。しかし今は、あまり深く考えずに思いっきり戦ってほしい。角田は、ここまで順調にF1までステップアップをしてきて、ある意味、怖いもの知らずだと思います。

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