中野信治が角田裕毅に感じる「天性の速さ」。勝つために必要なものは? (2ページ目)

  • 川原田剛●文 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 桜井淳雄、村上庄吾●撮影 photo by Sakurai Atsuo, Murakami Shogo

 クルマの限界を見極める能力は、レースでのオーバーテイクやタイヤの使い方のうまさにつながり、彼の武器になっています。タイヤマネジメントのうまさは、言い換えるとクルマなりに速く走れるということ。限界がわかるからこそ、タイヤやブレーキなどに無理な負担をかけずに走ることができる。うまいドライバーはそれが自然にできます。

 逆にできないドライバーは小細工して走ろうとするので、タイヤをいじめてしまうし、タイヤのグリップがなくなると余裕もなくなってくるので、無理を重ねてもっとタイヤをいじめるという悪循環に陥ってしまうのです。角田のうまさを象徴していたレースが昨年のF2最終戦のバーレーンでした。

 そのレースでは「タイヤをいかに守りながら速く走るか」が勝負のポイントでしたが、誰よりもうまくマネジメントできていたのが角田だった。他のドライバーは我慢しきれずに前半から飛ばしてタイヤを使ってしまいレース後半に大きくペースダウンしていましたが、角田は前半にポジションを落としてもすごく冷静でした。

 それはオーバーテイクがうまいからです。角田はライバルに先行されたとしても「いつでも抜けばいいや」と思っているようで、前半は無理せずにタイヤをセーブしながら冷静に戦っていました。そして、多くの選手がタイヤの摩耗に苦しみペースダウンした後半に角田は見事な追い抜きを次々と決めていくので、非常に目立っていました。

 うまいなぁと思いましたが、冷静に考えれば、角田は論理的にレースを組み立てていただけなんです。角田とともに今年ハースからF1デビューするミック・シューマッハやニキータ・マゼピンを始め、他の選手はそれができていなかったわけです。

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