F1開幕で角田裕毅に高まる期待と漂う大物感。「プレッシャーも緊張もない」

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by Boozy

 当然ながら、ホンダはこの最後のシーズンに投入する"新骨格"のRA621HでメルセデスAMGに追いつき、追い越すことを目標としている。

 それを想定したうえで設定した目標値は、しっかりと達成してきた。それはつまり、メルセデスAMGが昨年最終戦の出力からさらにパフォーマンスを伸ばし、このくらいまで到達するだろうという想定値をさらに上回っている、ということだ。

 いつも慎重な田辺テクニカルディレクターにしては珍しく、一歩踏み込んだ具体的な話をしてくれた。

「2021年に向けてパワーユニットの性能ターゲットを設定し、それに達したことは確認しています。去年のメルセデスAMGのレベルから通常の開発で性能向上してくることも鑑みてターゲットを設定していますから、『追い付け追い越せ』という(狙いで設定した)ターゲットをクリアしたということは、去年のメルセデスAMGよりも出ているんじゃないの?ということです。

 今年のメルセデスAMGがどういう性能でスタートするかは当然わかりませんが、それは予選・決勝が終われば我々の目にも皆さんの目にもある程度の答えが見えてくるんじゃないかと思います」

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 今シーズンかぎりでF1から去るホンダの技術者たちとしては、是が非でも勝ちたい。

 もちろん、レースというのは相対的なものであり、ライバルの性能との対決によって勝敗が決まる。そして、ライバルの性能は自分たちがどうすることもできない範疇だ。戦いを挑む者にとってできるのは、自分たちの全力を尽くし、悔いを残すことなく戦い抜くことだけだ。

「F1参戦最終年ということで、ひとつひとつを大事に、精一杯、悔いのないように戦っていきたいと思っています。残された1年、残された23戦で、戦いながらさらに学び、問題が出ればチームと連携して迅速に解決しつつ、できることはすべてやって1戦1戦を戦っていきたい。そうして悔いのないかたちで、我々に残された23戦を終えられればと思っています」

 歩み出す者と、去りゆく者......。角田裕毅とホンダの、それぞれのシーズンがいよいよ始まる。

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