徹底されたF1のコロナ対策。フォトグラファーが明かす現地での実情 (4ページ目)

  • 川原田剛●取材・文 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 熱田 護●撮影 photo by Atsuta Mamoru

ーーいったん隔離されたエリアの中に入ると、外からは出られなかったのですか?

熱田
 そうですね。サーキットとホテルがあるエリア周辺はフェンスで覆われていて、出入口にはセキュリティがいます。基本的に外には出られませんし、逆もそうです。そこまで徹底していました。僕はホテルに10日間いました。部屋にこもっていると運動不足になるので、「何時から何時まではサーキットを開放するので、その時間はそこで運動してもいい」という案内がありました。でも感染のリスクがあるので出歩くことはなかったです。

ーーF1は関わっているスタッフ数が多く、国境を越えて大人数が移動していきます。そこが他のスポーツイベントに比べて大変なところですが、2020年の17戦を開催して、最後までシーズンをやり遂げました。

熱田 そこはすごいと思います。コロナ対策は国によって状況や法律なども異なりますので、取材の際に事前に用意する書類や現地に入ってからの動き方がまったく違います。しかも感染状況は刻々と変わっていく。それをFIAはしっかりと把握しながら、ドライバー、チームのメカニックやエンジニア、メディア、運営スタッフなど、F1に関わるすべての人間の動きをコントロールしていかなければなりません。

 どれくらいの人数がイベントに関わっているのか、正確にはわかりません。でもバーレーンからアブダビへ移動した際、チャーター機に搭乗した人数を数えたら約1200人でした。バーレーンやアブダビの時にはすでにタイトルが決まっており、いつもよりチームやメディアなどの人数は少なかったと思いますが、それほどの人の動きを管理していたFIAの担当者は本当に大変だったと思います。

ーー話を伺うと、コロナ禍の取材は本当に大変だったと思いますが、中でも一番キツかったことは?

熱田
 日本でコロナに感染することと、海外でかかるのでは恐怖感が比較になりません。きちんと治療を受けられるのか、治療代はいくらかかるのか......。心配は尽きません。またイベント前後に書類を作ったりする事務作業や、帰国した後の自主隔離もすごく負担が大きい。そういったことを考えると、「次の取材はどうしようかな......」と躊躇してしまいます。だから最終的にはモチベーションを保つことが一番大変だったかもしれないですね。

4 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る