コロナ禍のF1現場で名フォトグラファーは見た。昨季の印象的な出来事

  • 川原田 剛●取材・文 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 五十嵐和博●写真(プロフィール) photo by Kazuhiro Igarashi

熱田 そういえば2019年シーズンの後半に入って、第13戦のベルギーGPと第14戦のイタリアGPで勝ちましたよね。

桜井 第15戦のシンガポールでも優勝し、後半戦3連勝。急に速くなったじゃないですか。でも現場の人間は、速くなった理由がわからないと言っていました。そのあとでフェラーリがパワーユニット(PU)に関してレギュレーション違反をしていると報道があって、「ああ、そういうことなんだ」って納得しました。結局、上層部とトップのエンジニアしか、速くなった理由を知らなかったんですよね。正直言って、現在の複雑なPUのレギュレーションのもとではフェラーリのような小さなクラフトメーカーが、メルセデスやホンダ、ルノーのような巨大な自動車メーカーと勝負するのは厳しいのかもしれないと感じます。

熱田 じゃあ、今年もダメだと(笑)。

桜井 どうかな(笑)。でも、トップを変えるぐらいの大胆な改革をしないと難しいかもしれません。もともとマッティア・ビノット代表は技術者で、チームリーダーには向いていないと思います。

熱田 フェラーリが優勝争いに加わってくれないと、やっぱり盛り上がらないですよね。メルセデスとレッドブルともう1チーム、フェラーリでもマクラーレンでもルノーから名称変更したアルピーヌでもいいので、優勝争いに絡んでほしい。どこが勝つかわからないレースじゃないと面白くないですから。

(中編につづく)

【profile】 
熱田護 あつた・まもる 
1963年、三重県鈴鹿市生まれ。二輪の世界GPを転戦した後、91年よりフリーカメラマンとしてF1の撮影を開始し、2019年のベルギーGPでF1取材が500戦を達成した。19年末に刊行した写真集『500GP フォーミュラ1の記憶』(インプレス)は好評で、完売間近。

桜井淳雄 さくらい・あつお 
1968年、三重県津市生まれ。91年の日本GPよりF1の撮影を開始。これまでに400戦以上を取材。F1やフェラーリの公式フォトグラファーも務める。新型コロナの影響もあり、20年は現場での撮影を断念したが、今シーズンは開幕前のテストを含めて全レースを取材する予定。

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