マルケスの「技」を盗めたか。中上貴晶がMotoGP参戦3年目を振り返る

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●写真 photo by Takeuchi Hidenobu

今季最高の4位となった第3戦アンダルシアGPの中上今季最高の4位となった第3戦アンダルシアGPの中上ーーそのような力強い走りをできるようになった転機はどのあたりですか。やはり、シーズン2戦目で4位に入ったアンダルシアGPでしょうか?

「そうですね。あのレースはスペインGPと連戦になったヘレスサーキットの2戦目で、ひとつのターニングポイントになりました。

 ヘレスの1戦目は10位で、まったく何もできずに終わってしまった。『3年目なのに開幕戦で10位はありえない。このままだとたいへんなシーズンになってしまう......』という恐怖心を覚えたくらいです。何かを変えなければ同じことの繰り返しになってしまうと思ったので、チームとHRC(ホンダ・レーシング)にお願いしてミーティングを持ちました。マルク(・マルケス)はあのレースで転倒して負傷しましたが、それまでは驚異的なペースで走っていたので、自分と彼はいったいどこが違うのか、データを付き合わせて徹底的に究明しました。

 決定的に違っていたのは彼特有の走らせ方で、自分とは真逆だったので『これを採り入れるのは大変だけど、やらなければ絶対に成績が変わらない』と思い、そこに集中しました。だから、ヘレスの2戦目は大きなターニングポイントだったと思います」

ーーその成果が、あの週末で右足裏に水ぶくれができるほどのライディング改造だった、というわけですね。

「そうです。一番の違いは、リアブレーキの使い方や使う場所、あとはコーナー進入時の減速ですね。普通は、主にフロントブレーキを使ってバイクを停めていくのですが、マルクの場合はフロントとリア両方を使い、タイヤのパフォーマンスを引き出してグリップも上手に使いながら、この難しいホンダのバイクをうまく停めていました。制動距離のところから、彼は〈停める+曲げる〉という動作をやっていたので、それを積極的に採り入れました」

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