ホンダF1、シーズン最終戦は最後のチャンス。来季につなげられるか (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by Boozy

 しかし、今季は4台ともに年間3基のパワーユニットでここまでやってきて、この最終戦アブダビでも突発的なことでもなければ追加の投入は予定していないという。

「今のところ戦略的なパワーユニット交換は一切考えていません。予選での空タンクでの乗り方と、決勝のフルタンクでタイヤデグラデーション(性能低下)もあるなかでの乗り方、それらがベストになるバランスで使ってきています。シーズンの最後で疲れちゃっているから少し落として使う、というような対応はありません」

 F1サーカスはバーレーンの2連戦から、そのままチャーター便でアブダビへと飛んだ。

 新型コロナウイルスの感染拡大により、厳しいロックダウン状態にあるアブダビへは特例で入国している。到着後はサーキットのあるヤス島のホテルにパトカー先導でバス移動し、ヤス島は高い壁で囲われて完全に隔離状態にあるため、F1関係者がそこから外に出ることは許されていない。

 PCR検査で陽性と判断されても、おいそれと代役スタッフをヨーロッパから呼び寄せられるような状況ではない。そのため、絶対に感染するわけにはいかないという大きな重圧のなかで関係者たちは過ごしている。

 そしてそれは、この3週間に限ったことではない。開幕前からずっと続いているものであり、その重圧がわずか5カ月間のシーズンを長く重苦しいものにしている。

 家族とともにイギリスに駐在しているレッドブルのスタッフでさえ、自宅で過ごす時間はごくわずかだった。ホンダの場合は日本から現地に赴くスタッフもおり、彼らは開幕前から一度も日本に帰ることなく現場で戦い続けている。

「日本から出張してきているメンバーにとっては、つらいシーズンだったと思います。山本(雅史マネージングディレクター)も1回しか日本に帰っていませんし、現場のクルーのなかには1回も帰っていない人もいます。

 常に『ありがとう』という気持ちですが、今の段階になると『(帰国まで)もうすぐだね』と聞いたら『(帰ったら)泣きます』と言っていました。そのくらい、厳しい仕事をお願いしているということです」

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