麗しき女性レーシングドライバー猪爪杏奈の挑戦。いばらの道を楽しむ (5ページ目)

  • 川原田剛●取材・文 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 能登直●写真 photo by Noto Sunao(a presto) 磯貝琢哉●動画 video by Isogai Takuya

 しかし経験を積む中で、だんだん強くなっていると感じています。18年に富士スピードウェイで開催されたアジアン・ルマンシリーズで大きなクラッシュをして腰椎と胸椎を圧迫骨折し、ドクターヘリで運ばれた経験があります。事故後のレースでは「怖くて走れないかもしれない......」とすごく心配したのですが、最初の一周をしたら、事故のことはすっかり忘れていましたから(笑)。

 近いうちにまた世界に絶対挑戦したいです。自分の足を使って、目で見て、肌で感じて、耳で聞いてみると、日本とは全然環境が違いました。世界は手ごわいですが、レベルの高いところでチャレンジしてみたいんです。

 周囲のドライバーは子どもの頃からカートを始めている人がほとんどです。私もレースをもっと早く始めていればよかったと思うことはあります。でも、小さい頃から始めていたら、両親に金銭面ですごく苦労させていたはず。また、スタートが遅かったからこそ、後がないと思って、必死にレースに向き合えています。

 これまでの道のりは簡単ではなかったですが、今、人生で一番楽しいです。道を切り拓いていくプロセスを楽しめていますし、自分の力でこじ開けるのは嫌いじゃありませんから(笑)。最終的にはスーパーGTやル・マン24時間レースにたどり着きたいです。

【profile】 
猪爪杏奈(いのつめ・あんな) 
1995年2月15日生まれ。東京都出身。全日本ジムカーナ元チャンピオンを父に持つ。幼少からピアノやバレーボールに取り組み、レースを始めたのは20歳。マツダの女性ドライバー育成プログラム「Mazda Women in Motorsport」に合格し、「ロードスター・パーティレース」に参戦。マニュアル車を運転し始めた数ヶ月後のレースで初表彰台に上がる。現在はスーパー耐久や競争女子選手権 (KYOJO CUP)に参戦し、チャンピオンを目指す。

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