2020.11.24

麗しき女性レーシングドライバー猪爪杏奈の挑戦。いばらの道を楽しむ

  • 川原田剛●取材・文 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 能登直●写真 photo by Noto Sunao(a presto) 磯貝琢哉●動画 video by Isogai Takuya

 オーディション前に、JAF-F4というカテゴリーのフォーミュラカーに乗ってはいたのですが、Wシリーズで使用するF3マシンは別次元でした。マシンのダウンフォースの量と身体にかかるG(重力加速度)も全然違いますので、中高速コーナーでハンドルが重くて切れないんです。英語でのコミュニケーション力も不十分で、無線で何を言っていたのかわからない状態で走っていました。とんでもないところに来てしまったと現地で気がつきました。

 オーディションでのタイムはトップから約4秒遅れのビリ。今までやっていたトレーニング方法を一から変えなければならないと気づかされました。今はトレーニングジムに通って、肉体改造に取り組んでいます。

 Wシリーズ参戦を考えたのは、将来海外で活躍したいという夢があるからです。シリーズ初年度は日本から小山美姫選手が出場しましたが、ずっと気になっていました。ただオーディション参加は公募されていたわけではなかったんです。いろんな人に話を聞いて情報を集め、助けをもらいながら向こうの窓口に自分でコンタクトをとって、何とか参加できました。思い立ったら、すぐ行動してしまうタイプなんです(笑)。

 ドライビングのスキル、体力、セッティング能力などすべてを磨いていく必要がありますが、どういう状況でもしっかりと結果を残すためのメンタルも課題ですね。今までメンタルは強いほうだと思っていたのですが、レースを始めてから自分の弱さに気づきました。モータースポーツは一歩間違えたら死ぬかもしれません。そういう世界で生きるレーシングドライバーは男性の中でも野心の強い人たちが多いと思います。

 彼らを打ち負かして這い上がっていかなければならないので、相当なエネルギーや根性が必要です。レースでは、経験したことのないような厳しい状況に追い込まれ、周りが気になってしまったり、負けたらどうしようと弱気になったりすることもありました。そういった一面が自分にあると知り、当初は戸惑いました。