2020.11.24

麗しき女性レーシングドライバー猪爪杏奈の挑戦。いばらの道を楽しむ

  • 川原田剛●取材・文 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 能登直●写真 photo by Noto Sunao(a presto) 磯貝琢哉●動画 video by Isogai Takuya

レースに挑んでいる「今が一番楽しいです」と話す猪爪レースに挑んでいる「今が一番楽しいです」と話す猪爪  きっかけは、高校3年生の頃から父が自家用の電気自動車(EV)で草レース(アマチュアレース)を始め、お手伝いとしてサーキットを訪れるようになったことです。普通なら行かないんですけど、「バイト代をあげる」と言われて(笑)。洋服がほしかったので、袖ヶ浦フォレストレースウェイ(千葉県)に何度か手伝いに行っていました。

 そのうち、父から「ちょっと走ってみるか」と話がありました。大学1年生の秋に免許を取って、2カ月後のことでした。「うーん、どうしようかな......」と返事をしたのですが、次の時には私のためのヘルメットとレーシングスーツ、グローブなどが全部用意されていました(笑)。それでEVのレースに出場することになり、実際に走ってみるとレースの面白さや悔しさなどが少しずつわかってきました。そうしていくうちに、プロを目指すようになっていきました。

 レースを始めた当初は、父からはよく「ポンコツだな」と言われていました(笑)。私は結構ビビリで、久しぶりにサーキットを走ると、怖くて萎縮しちゃう部分が今でもあります。おどおどしながら走っていると、最初の頃はぶん殴られるんじゃないかぐらいの勢いで怒られて、喝を入れられて、泣きながら走るという感じでした。

 今季は資金不足でフォーミュラの活動は断念し、競争女子選手権(KYOJO CUP)とスーパー耐久に参戦しています。スーパー耐久のチームは父が監督をしているので、マシンのセットアップなどで相談しながらやっています。

 でも実は、レースをするまでは父のことがちょっと苦手だったんです(笑)。父はモータースポーツをやっていたので気性が荒いので、少し怖かったんです。ただふとした時に、父と私、そっくりなんですよね。レース中にマシンを運転していると、「この野郎、邪魔だな、どけよ」と言っちゃうことがあるんです。「ああ、そういえばお父さんも同じこと言っていたな」って(笑)。似ていたから、嫌だったのかもしれないですね。