角田裕毅、F1マシン初ドライブ。F2マシンとの違いで驚いた点は? (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

 2008年の富士スピードウェイで行なわれた日本GPを観に行った記憶が、当時8歳の角田はうっすらとあるという。ただ、カートをやっていた頃は「F1ドライバーになりたいと思っていたわけではなく、楽しくてなんとなくやっていた」。

 SRS-F(鈴鹿レーシングスクール・フォーミュラ)を首席で卒業し、FIA F4に参戦し始めて、ようやくホンダが参戦しているF1という世界で戦ってみたいという気持ちが芽生えたという。だから、F1への過度なイメージもなければ、憧れのドライバーもいない。

 FIA F4の2年目でタイトル争いをしながらレッドブルジュニアのオーディションに合格し、翌年にはヨーロッパへ渡ってFIA F3に参戦。そして今年はFIA F2でルーキーにして上位争いの常連となった。英国ミルトンキーンズに住み、普段からレッドブルのファクトリーに出入りしてシミュレーターをドライブする。

 彼にとってF1は、憧れの世界というよりも、自分が今戦っているFIA F2を自分の実力どおりに戦い抜けば、自ずと辿り着ける"現実の世界"なのだろう。だから今年F2でしっかりと実力を発揮して結果を残している彼にとって、今回のF1テストも、これからやってくるであろうFP1出走や公式テスト、そしてスーパーライセンスを取得してF1デビューを果たすことも、緊張することではないのだ。

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 どうしても周囲は、今回のテストでF1への道のりが一気に近づいたのではないかと期待に胸を躍らせてしまう。しかし、当の本人は浮き足立つことなく、スーパーライセンスの可否を握るバーレーンでのFIA F2の残り2ラウンドに100%集中している。

「F1が近づくとか近づかないかは考えていなくて、すべてはF2の結果次第。それしか頭にない。目の前のレースで結果を出せば付いてくるものだと思っているし、まずは自分のやらなきゃいけないレースでしっかり戦うようにしたいことしか考えていないんです」

 そういって角田はルーティンの朝のトレーニングに入っていった。夢でも憧れでも希望でもなく、彼は現実の世界を生き、F2からF1へとさらなる一歩を踏み出そうとしている。

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