「女には無理」と言われた悔しさをエネルギーに。粟野如月は最高峰を目指す

  • 川原田剛●取材・文 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 能登直●写真 photo by Noto Sunao(a presto) 磯貝琢哉●動画 video by Isogai Takuya

 そこでハッと気づきました。「私でもできるモータースポーツがあるんだ。D1の舞台を目指してやってみよう!」、と。その瞬間、見る側からやる側へと気持ちがガラっと変わりましたね。レースクイーンやコンパニオンの仕事で貯めたお金で、今も愛車のクレスタを購入しました。練習を重ね、時にはぶつけ、時には壊しながら、ともにここまでやって来ました。

 最初はただただドリフトが「好き」、「カッコいい」というのが原動力になっていました。でも実際にドライバーとお話していると、キラキラしている世界にいるために、皆さんは普段からすごく努力されていることを知りました。

 その点は、私が歌手を目指した理由とリンクしていたのかもしれません。私はエンターテイナーのように、夢や笑顔、希望を与えられる人がカッコいいという憧れがずっとありました。小さい頃はただ歌やダンスが好きでしたが、年を重ねるうちに、エンターテイナーはその世界にいるために、必死に頑張っていることを知りました。だからこそ、光り輝いているんですよね。

「エンターテイナーは歌手やダンサーだけじゃない。モータースポーツの選手も一緒なんだ」と感じるようになり、私もやってみたい、私にもできるかもしれないと思ってしまいました。今思えば、その自信の根拠はどこにあったのかなって(笑)。

 いざ競技を始めると、苦労は多かったです。特に何を苦労したかといえば、はっきり言って、お金です。どんな競技も練習すればするほど技術は身についていくと思います。でもモータースポーツは、練習したくてもお金がなければサーキットに行けません。しかも、練習中にミスをしてマシンを壊せば、修理費用がかかります。さらに消耗品のタイヤやオイル、サーキットまでの高速代にガソリン代......。ドリフトの練習に集中したいのですが、そのためには仕事を頑張らなければならないというジレンマがありました。

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