女性プロドライバーの苦悩。マシンを壊した後「男性と扱いが違う」難しさ (3ページ目)

  • 川原田剛●取材・文 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 能登直●写真 photo by Noto Sunao(a presto) 磯貝琢哉●動画 video by Isogai Takuya

ーーレース活動はずっとひとりでやってきたのですか? 

いとう 基本的にひとりです。レースに関してはマネージャーがいませんので、チームの交渉やスポンサー集めもひとりでやってきました。「こういうカテゴリーに出場するために、活動予算がこれぐらい必要なので、応援してくれませんか」という感じです。でも、「マシンにロゴをつけて、うちの会社にどんなメリットがあるの?」と相手にしてもらえないことも多いです。 

 スポンサー集めの活動では、女性であることで厳しさを感じた経験もあります。例えば、企業が女性ドライバーのスポンサーをすることが、世間的に必ずしも好意的に捉えられない場合もあるんです。

ーーそれはどういうことですか? 

いとう
 実際、ある企業の方から「応援したいんだけど、周りの目があるから......」と言われました。私に対して下心があってスポンサーをしていると周囲から思われることを懸念していたようです。エステや化粧品など、女性との関連性が強い企業だったら、お互いにとってプラスになることがわかりやすいですが、選択肢がどうしても限られてしまいます。

ーーそれ以外に女性ドライバーとして戦う中で難しいと感じることはありますか? 

いとう マシンに乗ってしまえばほとんどありません。難しいのはマシンを降りた後です。特に感じるのは、女性に対して本気で接してくれないこと。ダメだったらダメだとはっきり言ってほしいのですが、スタッフの方が怒ってくれないんです。

「気にしなくていいよ」といったことを言われて、その言葉どおりに受け取ったら、本心はまったく違っていて、結局は離れていってしまった、という経験を何度かしました。あとになって「ああ、やっぱり怒っていたんだな、本当は嫌だったんだな」と気づいて......。それならその時にはっきりと言ってほしかったというのはありますね。 

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